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73.真実2
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水晶が白い光を放つ。光に包まれ、魔素がぐるぐると晴人の周辺で渦巻き始めた。
とうとうこれでこの世界ともお別れのようだ。もう眩しくて見えないが、セイはきっと今も近くにいてくれることだろう。
今までのセイとの思い出がよみがえる。
いつでも穏やかに晴人を見守り、甘やかさずに導いてくれたセイ。元の世界に戻っても、セイのことを忘れることは決してないだろう。
晴人は寂しさと感謝の思いに包まれながら、そのときを待つ。
ところが、晴人の周辺を漂う魔素が困ったようにさまよい始めた。周囲の光もだんだん弱まってくる。
やがて、水晶の光も消えてしまった。
「……ある程度予想はしていたけれど、やっぱりか」
セイの声がはっきりと響いた。いつもわずかにぼやけているセイの声だが、やけにはっきりと聞こえる。
どうしたのだろうと視線を向け、晴人は目を見開いて固まった。普段はぼんやりとした姿で空中にふよふよと浮いているセイが、はっきりくっきりと見える。しかも空中に浮いておらず、床の上に立っていた。
「セ、セイ……なの……?」
「ん? そうだよ、セイだよ。これが僕の肉体さ。約三百年ぶりかな。手足の動かし方、どうだったっけ」
ぶつぶつと呟きながらセイはぶっきらぼうに晴人の元まで歩いてくる。そして、いきなり晴人を抱きしめた。
「ええっ!?」
「ああ、あったかい。ずっときみの側にいたけれど、触れられなかったものね。温かい、なんていう感覚も久しぶりだよ」
「え、え?」
混乱する晴人に構わず、セイはしっかりと晴人を抱きしめて、逃すまいとするように力をこめる。
「きみは結構、鈍いね。僕のときはここに来る頃には、何となく予想がついていたものだったよ。まあ、そんなところも可愛いけれど」
くすくすと軽やかな笑い声が晴人の耳をくすぐる。
「ど、どういうこと?」
何がどうなっているのか、さっぱりわからない。今までずっと触れようとしてもすり抜けるだけだったセイに抱きしめられているのだ。
しかもセイのときはどうのなど、言っていることが理解できない。鈍いということだけ、きっとそうなのだろうと納得できた。
「僕は先代神子だよ。今まできみの側にいたのは精神体で、本体はここで眠っていたんだ」
「ええっ!?」
晴人は驚きのあまり、動くことすらできなかった。あまりにも衝撃的な言葉だ。そのまま呆然と、セイに抱きしめられたまま立ち尽くす。
だんだんと驚愕の波が引いていくと、今までの出来事が思い出される。
セイが語る過去のことは主に前回の話で、その前の話が少しといったところだった。
よくよく考えてみれば、前回のことは我がことのようにしっかりと話していたが、その前のことは人づてに聞いたような話し方だったように思える。
先代神子というのなら、前回は晴人と同じように旅をしたのだろう。実際に経験したことなのだから、我がことなのは当然だ。
「ここまで聞いて、何か思うことはない?」
固まったままの晴人に向け、セイが悪戯っぽい声をだす。
「えっと……先代神子ってことは、俺と同じように異世界から召還されて……?」
まだまとまらない頭をどうにか整理しようと、晴人は時系列順に並べてみることにした。まずは晴人がこの世界に現れたときのことを思い出す。
「そのとおり。きみと同じように旅をして、最後に魔素を封じ込めて眠っていたのさ」
予想していたこととほぼ同じ答えが返ってくる。
しかし、魔素を封じ込めて眠っていたというのは疑問だ。魔素を封じたのなら、帰れるのではないだろうか。
「元の世界には帰らなかったの?」
晴人の質問に、セイは抱きしめる腕をゆるめて晴人と向き合い、歪んだ笑みを浮かべる。
「魔素を封じるのは、神子の身に封じるんだ。いわば肉体を生贄とした神子は、精霊として次代の神子を導く。そして次代の神子を生贄としたとき、そこでやっと元の世界に帰れるのさ」
淡々としたセイの言葉が、いまいち晴人の頭に入らない。というよりも、入ってほしくない。
いったいセイは何を言っているのだろうか。冗談だと言ってほしい。晴人は唖然としてセイを見つめることしかできなかった。
しかし、セイは残酷な言葉を続ける。
「つまり、きみは今回帰れない。今回は、きみが生贄になるんだ」
とうとうこれでこの世界ともお別れのようだ。もう眩しくて見えないが、セイはきっと今も近くにいてくれることだろう。
今までのセイとの思い出がよみがえる。
いつでも穏やかに晴人を見守り、甘やかさずに導いてくれたセイ。元の世界に戻っても、セイのことを忘れることは決してないだろう。
晴人は寂しさと感謝の思いに包まれながら、そのときを待つ。
ところが、晴人の周辺を漂う魔素が困ったようにさまよい始めた。周囲の光もだんだん弱まってくる。
やがて、水晶の光も消えてしまった。
「……ある程度予想はしていたけれど、やっぱりか」
セイの声がはっきりと響いた。いつもわずかにぼやけているセイの声だが、やけにはっきりと聞こえる。
どうしたのだろうと視線を向け、晴人は目を見開いて固まった。普段はぼんやりとした姿で空中にふよふよと浮いているセイが、はっきりくっきりと見える。しかも空中に浮いておらず、床の上に立っていた。
「セ、セイ……なの……?」
「ん? そうだよ、セイだよ。これが僕の肉体さ。約三百年ぶりかな。手足の動かし方、どうだったっけ」
ぶつぶつと呟きながらセイはぶっきらぼうに晴人の元まで歩いてくる。そして、いきなり晴人を抱きしめた。
「ええっ!?」
「ああ、あったかい。ずっときみの側にいたけれど、触れられなかったものね。温かい、なんていう感覚も久しぶりだよ」
「え、え?」
混乱する晴人に構わず、セイはしっかりと晴人を抱きしめて、逃すまいとするように力をこめる。
「きみは結構、鈍いね。僕のときはここに来る頃には、何となく予想がついていたものだったよ。まあ、そんなところも可愛いけれど」
くすくすと軽やかな笑い声が晴人の耳をくすぐる。
「ど、どういうこと?」
何がどうなっているのか、さっぱりわからない。今までずっと触れようとしてもすり抜けるだけだったセイに抱きしめられているのだ。
しかもセイのときはどうのなど、言っていることが理解できない。鈍いということだけ、きっとそうなのだろうと納得できた。
「僕は先代神子だよ。今まできみの側にいたのは精神体で、本体はここで眠っていたんだ」
「ええっ!?」
晴人は驚きのあまり、動くことすらできなかった。あまりにも衝撃的な言葉だ。そのまま呆然と、セイに抱きしめられたまま立ち尽くす。
だんだんと驚愕の波が引いていくと、今までの出来事が思い出される。
セイが語る過去のことは主に前回の話で、その前の話が少しといったところだった。
よくよく考えてみれば、前回のことは我がことのようにしっかりと話していたが、その前のことは人づてに聞いたような話し方だったように思える。
先代神子というのなら、前回は晴人と同じように旅をしたのだろう。実際に経験したことなのだから、我がことなのは当然だ。
「ここまで聞いて、何か思うことはない?」
固まったままの晴人に向け、セイが悪戯っぽい声をだす。
「えっと……先代神子ってことは、俺と同じように異世界から召還されて……?」
まだまとまらない頭をどうにか整理しようと、晴人は時系列順に並べてみることにした。まずは晴人がこの世界に現れたときのことを思い出す。
「そのとおり。きみと同じように旅をして、最後に魔素を封じ込めて眠っていたのさ」
予想していたこととほぼ同じ答えが返ってくる。
しかし、魔素を封じ込めて眠っていたというのは疑問だ。魔素を封じたのなら、帰れるのではないだろうか。
「元の世界には帰らなかったの?」
晴人の質問に、セイは抱きしめる腕をゆるめて晴人と向き合い、歪んだ笑みを浮かべる。
「魔素を封じるのは、神子の身に封じるんだ。いわば肉体を生贄とした神子は、精霊として次代の神子を導く。そして次代の神子を生贄としたとき、そこでやっと元の世界に帰れるのさ」
淡々としたセイの言葉が、いまいち晴人の頭に入らない。というよりも、入ってほしくない。
いったいセイは何を言っているのだろうか。冗談だと言ってほしい。晴人は唖然としてセイを見つめることしかできなかった。
しかし、セイは残酷な言葉を続ける。
「つまり、きみは今回帰れない。今回は、きみが生贄になるんだ」
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