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51.地獄絵図1
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晴人はルイスにどう接したらよいものかわからないまま、もともとあてがわれていた部屋に戻った。
ルイスの態度は終始にこやかで、悪いことや間違ったことをしたとはかけらも思っていないようだった。
晴人は文句すら言えずに口ごもってしまう。
「神子様もお疲れでしょう。ゆっくりお休みください」
丁寧に晴人を送り届けると、ルイスは去っていった。
お休みくださいと言われても、実は起きたばかりなのだが、と晴人は取り残されながら思う。
「セイ」
「何だい?」
すぐに返ってきたセイの声は、心なしか優しく感じられる。
「俺、どうしたらいいんだろう……」
狂気をはらんだルイスから遠ざかりたい、このまま進んでいってセイとの別れを迎えるのがつらいなど、様々な思いが晴人の中に交錯して、口からはため息しか出てこない。
「きみがどうするかは、きみにしか決められないんだ。僕にはどうすることもできない」
相変わらず突き放したような答えしか返ってこないが、セイの声には悲しみもにじんでいるようだった。
「……せめて、領主がルイスさんの目を覚ましてくれるといいんだけど……」
「うーん……難しいだろうね。どうもこの都全体が淀んでいるようだ。魔素そのものじゃないけれど、魔素が変化したようなものを感じる」
「それって、どういうこと? もしかして、それのせいでルイスさんもおかしくなっているとか?」
「きっと、もともとそういう性質は持っていたんだと思うよ。ただ、この淀みの影響でそれが強く出ているということは考えられるね。もともと持っている負の要素を強める力が働いているようなんだ」
「そっか……じゃあ、元を取り除かないとダメか。魔素が変化したっていうのなら、俺にも浄化できるよね、きっと」
晴人が思案すると、くすりと笑う声が聞こえた。どうしたのかとセイを見てみれば、セイは目を細めて晴人を眺めている。
「いや、きみも神子らしくなったなと思ってね」
「まあ、俺だって少しは……」
優しげなセイの眼差しにどことなく気恥ずかしくなり、晴人は視線をそらしてぼそぼそと呟く。
「ただ、十分に気をつけたほうがいい。領主だって、本当にまともかどうか怪しいもんだよ。できれば、早くここを出たほうがいい」
「そうだね。でも、勝手に出て行くと問題が起こるかな……この城には跳ね橋もあったし、勝手には出られないのかも。……そうだ、神殿に行きたいからここを出るって言って出て行くのはどうだろう?」
「それも手だね。神子が神殿に行きたいと言ってもおかしなことじゃない。むしろ、自然なことだよ」
セイの賛成も得られたので、晴人は神殿に向かうことにして城を出ようと決めた。 もともと、シオンの弟の件でも神殿を訪ねたかったのだ。
ルイスの態度は終始にこやかで、悪いことや間違ったことをしたとはかけらも思っていないようだった。
晴人は文句すら言えずに口ごもってしまう。
「神子様もお疲れでしょう。ゆっくりお休みください」
丁寧に晴人を送り届けると、ルイスは去っていった。
お休みくださいと言われても、実は起きたばかりなのだが、と晴人は取り残されながら思う。
「セイ」
「何だい?」
すぐに返ってきたセイの声は、心なしか優しく感じられる。
「俺、どうしたらいいんだろう……」
狂気をはらんだルイスから遠ざかりたい、このまま進んでいってセイとの別れを迎えるのがつらいなど、様々な思いが晴人の中に交錯して、口からはため息しか出てこない。
「きみがどうするかは、きみにしか決められないんだ。僕にはどうすることもできない」
相変わらず突き放したような答えしか返ってこないが、セイの声には悲しみもにじんでいるようだった。
「……せめて、領主がルイスさんの目を覚ましてくれるといいんだけど……」
「うーん……難しいだろうね。どうもこの都全体が淀んでいるようだ。魔素そのものじゃないけれど、魔素が変化したようなものを感じる」
「それって、どういうこと? もしかして、それのせいでルイスさんもおかしくなっているとか?」
「きっと、もともとそういう性質は持っていたんだと思うよ。ただ、この淀みの影響でそれが強く出ているということは考えられるね。もともと持っている負の要素を強める力が働いているようなんだ」
「そっか……じゃあ、元を取り除かないとダメか。魔素が変化したっていうのなら、俺にも浄化できるよね、きっと」
晴人が思案すると、くすりと笑う声が聞こえた。どうしたのかとセイを見てみれば、セイは目を細めて晴人を眺めている。
「いや、きみも神子らしくなったなと思ってね」
「まあ、俺だって少しは……」
優しげなセイの眼差しにどことなく気恥ずかしくなり、晴人は視線をそらしてぼそぼそと呟く。
「ただ、十分に気をつけたほうがいい。領主だって、本当にまともかどうか怪しいもんだよ。できれば、早くここを出たほうがいい」
「そうだね。でも、勝手に出て行くと問題が起こるかな……この城には跳ね橋もあったし、勝手には出られないのかも。……そうだ、神殿に行きたいからここを出るって言って出て行くのはどうだろう?」
「それも手だね。神子が神殿に行きたいと言ってもおかしなことじゃない。むしろ、自然なことだよ」
セイの賛成も得られたので、晴人は神殿に向かうことにして城を出ようと決めた。 もともと、シオンの弟の件でも神殿を訪ねたかったのだ。
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