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45.陰鬱な城内1
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ひとしきり晴人が怒りを吐き出して落ち着いてきた頃、夕食の準備が整ったと使用人らしき男が晴人を迎えに来た。
晴人は頷いて男についていくが、その間、男は一言も口をきかない。
失礼があるというわけではなく、むしろ態度はうやうやしく丁寧だ。しかし、よく見てみれば怯えているようでもあった。
硬質な音を響かせる床は暗さとあいまって、晴人の不安を誘う。
先ほど、セイが淀んでいると言っていたから、それで必要以上に神経質になっているだけだと晴人は自らに言い聞かせて、軽く首を振る。
案内された食堂は広く、蝋燭の明かりが煌々と灯っていた。それでもどことなく暗く感じられたが、現代の電灯に比べれば暗いのは当たり前だろうと、晴人は思いを打ち消す。
すでに食堂で待っていたルイスが立ち上がり、晴人を出迎える。見渡せば、広い食堂には晴人とルイスのほかは、給仕役の使用人らしき男が数名いるだけだ。
「本来ならば領主である父がご挨拶するべきなのですが、あいにく病で伏せっておりまして……申し訳ございません」
わずかに眉を寄せてルイスが頭を下げる。
もしかして、領主が病で伏せっているため、城内の雰囲気も暗いのだろうか。
晴人はそっと使用人たちの様子をうかがうが、誰もが無表情で人形のように立っているだけだった。
促され、晴人も席に着く。神殿で味わった以上に豪勢で手の込んだ料理が、ところ狭しと並べられた。
空腹を思い出した晴人はありがたく料理を味わう。いろいろな料理に手をつけるが、きっちり整っているとでもいうべき味の料理ばかりだった。確かに美味しいのだが、何かが足りないような気もする。
神殿の料理はもっと温かく染みこんでいったように思えるのだ。
単純に舌で味わう部分だけなら、ここの料理のほうが美味しいだろう。
しかし、身体を潤すものというか、心を満足させる何かが欠けているようだった。
それでも晴人の腹は満たされ、ルイスと他愛もない会話をしながら夕食の時間は過ぎていった。
途中、セイの様子をちらりと伺えば、どことなく不機嫌そうに黙ったまま腕を組んで空中に浮かんでいた。他人がいる場所で黙っているのはいつものことだが、この城に来てからセイの様子がどうもおかしい。
晴人の胸にもやもやとした不安が浮かび上がってくるが、何もすることはできずに時間は過ぎていく。
晴人は頷いて男についていくが、その間、男は一言も口をきかない。
失礼があるというわけではなく、むしろ態度はうやうやしく丁寧だ。しかし、よく見てみれば怯えているようでもあった。
硬質な音を響かせる床は暗さとあいまって、晴人の不安を誘う。
先ほど、セイが淀んでいると言っていたから、それで必要以上に神経質になっているだけだと晴人は自らに言い聞かせて、軽く首を振る。
案内された食堂は広く、蝋燭の明かりが煌々と灯っていた。それでもどことなく暗く感じられたが、現代の電灯に比べれば暗いのは当たり前だろうと、晴人は思いを打ち消す。
すでに食堂で待っていたルイスが立ち上がり、晴人を出迎える。見渡せば、広い食堂には晴人とルイスのほかは、給仕役の使用人らしき男が数名いるだけだ。
「本来ならば領主である父がご挨拶するべきなのですが、あいにく病で伏せっておりまして……申し訳ございません」
わずかに眉を寄せてルイスが頭を下げる。
もしかして、領主が病で伏せっているため、城内の雰囲気も暗いのだろうか。
晴人はそっと使用人たちの様子をうかがうが、誰もが無表情で人形のように立っているだけだった。
促され、晴人も席に着く。神殿で味わった以上に豪勢で手の込んだ料理が、ところ狭しと並べられた。
空腹を思い出した晴人はありがたく料理を味わう。いろいろな料理に手をつけるが、きっちり整っているとでもいうべき味の料理ばかりだった。確かに美味しいのだが、何かが足りないような気もする。
神殿の料理はもっと温かく染みこんでいったように思えるのだ。
単純に舌で味わう部分だけなら、ここの料理のほうが美味しいだろう。
しかし、身体を潤すものというか、心を満足させる何かが欠けているようだった。
それでも晴人の腹は満たされ、ルイスと他愛もない会話をしながら夕食の時間は過ぎていった。
途中、セイの様子をちらりと伺えば、どことなく不機嫌そうに黙ったまま腕を組んで空中に浮かんでいた。他人がいる場所で黙っているのはいつものことだが、この城に来てからセイの様子がどうもおかしい。
晴人の胸にもやもやとした不安が浮かび上がってくるが、何もすることはできずに時間は過ぎていく。
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