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35.戻りたくない1
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「いやいや、熱烈な愛の告白だったね」
話し合いが終わり、晴人に対して激しく謝る二人にかえって恐縮した後、ようやくあてがわれた部屋に戻ると、セイがしみじみと呟いた。
「え? あれって、そういうことなの?」
「それ以外に何があるんだい。鈍いね。……ああ、この世界は男同士の夫婦って当たり前だから」
「そうなんだ……」
今さら驚くようなことではない。女の数が少ないというのだし、そうなるのも当たり前なのだろう。
「きみ、強姦されそうになったのに意外と平然としているけれど、もしかして余計なことをしちゃった?」
「いやいや! 神殿長さんがつらそうだったからあまり怒る気になれないだけで……貞操を守れて安心したよ。……でも、余計なことって何?」
晴人が首を傾げると、セイの顔にしまったというような焦りがにじんだ。
「……シオンを呼んできたんだよ。彼は僕の姿が見えたからね。声そのものは聞き取れないみたいだったけれど、何を言っているのかは大体わかるようだった。だから、きみを助けに行ってもらったんだ」
何も言わないか話を変えるかで、答えようとしないのではと思ったが、セイは意外にもあっさりと白状した。
「え……? きっかけとしてヤられてみればいいって言っていなかったっけ?」
あっさりと白状したこと以上に、内容は驚きだった。晴人が目を見開いて尋ねると、セイはぷいとそっぽを向いた。
「……気が変わったんだよ」
セイは照れたようにぼそりと吐き捨てる。
「あ……その……えっと、ありがとう……」
セイの照れが伝染したように、晴人もどことなく気恥ずかしくなりながら礼を言う。二人の間に妙な沈黙が流れた。
「さ、きみも疲れただろう。早く休むといい」
ごまかすようにセイが別の話題を持ち出す。確かに身体には疲労がどっしりとのしかかっていた。
晴人は頷いて寝台にもぐりこみ、またもいろいろなことがあった一日を締めくくることにした。
まだこの世界にやってきて二日目なのだが、もう一ヶ月以上いるような気分だった。密度でいえば、それくらいはありそうに思える。少なくとも日本でのほほんと学生をしているときよりは、生き急いでいると言えるだろう。
明日は何が待っているのかと思いを馳せる間もなく、晴人は夢の世界へと引き込まれていった。
話し合いが終わり、晴人に対して激しく謝る二人にかえって恐縮した後、ようやくあてがわれた部屋に戻ると、セイがしみじみと呟いた。
「え? あれって、そういうことなの?」
「それ以外に何があるんだい。鈍いね。……ああ、この世界は男同士の夫婦って当たり前だから」
「そうなんだ……」
今さら驚くようなことではない。女の数が少ないというのだし、そうなるのも当たり前なのだろう。
「きみ、強姦されそうになったのに意外と平然としているけれど、もしかして余計なことをしちゃった?」
「いやいや! 神殿長さんがつらそうだったからあまり怒る気になれないだけで……貞操を守れて安心したよ。……でも、余計なことって何?」
晴人が首を傾げると、セイの顔にしまったというような焦りがにじんだ。
「……シオンを呼んできたんだよ。彼は僕の姿が見えたからね。声そのものは聞き取れないみたいだったけれど、何を言っているのかは大体わかるようだった。だから、きみを助けに行ってもらったんだ」
何も言わないか話を変えるかで、答えようとしないのではと思ったが、セイは意外にもあっさりと白状した。
「え……? きっかけとしてヤられてみればいいって言っていなかったっけ?」
あっさりと白状したこと以上に、内容は驚きだった。晴人が目を見開いて尋ねると、セイはぷいとそっぽを向いた。
「……気が変わったんだよ」
セイは照れたようにぼそりと吐き捨てる。
「あ……その……えっと、ありがとう……」
セイの照れが伝染したように、晴人もどことなく気恥ずかしくなりながら礼を言う。二人の間に妙な沈黙が流れた。
「さ、きみも疲れただろう。早く休むといい」
ごまかすようにセイが別の話題を持ち出す。確かに身体には疲労がどっしりとのしかかっていた。
晴人は頷いて寝台にもぐりこみ、またもいろいろなことがあった一日を締めくくることにした。
まだこの世界にやってきて二日目なのだが、もう一ヶ月以上いるような気分だった。密度でいえば、それくらいはありそうに思える。少なくとも日本でのほほんと学生をしているときよりは、生き急いでいると言えるだろう。
明日は何が待っているのかと思いを馳せる間もなく、晴人は夢の世界へと引き込まれていった。
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