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20.奪われた魔晶石3
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もう駄目かと晴人はぎゅっと目を閉じ、来るべき衝撃に備える。しかし、いくら待っても次の動きはなかった。
おそるおそる目を開けてみると、触手の姿は消えていた。身体にまとわりついていた泡も消え、いたるところを溶かされた服だけが身体に張り付いている。
「よく頑張ったね。触手は浄化されたよ」
セイがぼろぼろになった晴人を抱きしめ、頭を撫でる。
精霊であり肉体を持たないセイは、抱きしめる腕も、撫でる手も、晴人をすり抜けていってしまい、セイの温もりが晴人に伝わることはない。それでも晴人は触れられている箇所からじんわりと優しさがにじんでいくように感じられた。
その場に座り込み、晴人は勝手に流れてしまう涙を止めようと深呼吸を続ける。
口を開けば嗚咽にしかならなさそうで、ただ息を吸って吐き出すことだけに集中した。
セイは黙って晴人の頭を撫で続けていた。回数を重ねればいつか温もりが届くとでもいうように、何度も何度も繰り返す。
やがて晴人も落ち着き、セイに向けてどうにか笑顔を浮かべてみせると、セイも安堵したような微笑みを返した。
「あんた、本当に神子なんだね。お疲れ様」
突然、小ばかにしたような声が響いた。晴人がびくっと身をすくませて声の方向を伺うと、そこには美少女だと勘違いしてしまったインプの姿があった。
「昨日のインプ……?」
「そうだよ。あんたが突き放したインプさ。床に叩きつけられて痛かったんだから」
「あ……ごめん……悪かった……」
思わず晴人が謝ると、インプは顔をしかめた。
「……なに謝ってるのさ。とにかく、この沼を浄化しちゃうなんて、まさかと思ったけど本当に神子だったんだね。ずいぶんと素敵な格好になっちゃったみたいだけど」
言われて晴人は自らの服に目をやる。上半身はほとんど見る影もなく、下半身も前側だけはどうにか大切なところを隠せているといった有様だ。後ろから見れば、尻は丸出しだろう。
「恥ずかしい? じゃあ、オレからの贈り物を受け取って」
晴人の目の前に一着の服が広げられる。何の変哲もない、ごく普通の布の服だ。晴人の体型にも合いそうな大きさだった。
「あ、ありがとう……」
差し出された服を晴人は手に取る。
このインプが何故このような贈り物をしてくれるのかはわからないが、今の恥ずかしい姿から逃れられるなら歓迎だった。
「ハルト!」
しかしセイの叫びが晴人の心を凍らせる。この服に罠でもあるのだろうかと、晴人は反射的に服から手を離す。
服は地面に落ちそうになるが、インプはその前に拾い上げて晴人の肩にかけた。
「ほら、落ちて泥だらけになったらもったいないだろう。服には何の仕掛けもないから安心しなよ。オレがもらうのは違うモノ。あんたがオレの贈り物を受け取ったから、オレはあんたからひとつもらっていく。たった今、あんたが得ようとした力をね」
くすくすと笑いながら、インプは片手を空中にかざした。その手の中に小さな黒い塊が現れる。
インプは黒い塊を見て満足そうに目を細めると、飲み込んでしまった。
「魔晶石、もらったよ。あんたからのお返し、オレも満足した。お互い、いい取り引きができたね」
おそるおそる目を開けてみると、触手の姿は消えていた。身体にまとわりついていた泡も消え、いたるところを溶かされた服だけが身体に張り付いている。
「よく頑張ったね。触手は浄化されたよ」
セイがぼろぼろになった晴人を抱きしめ、頭を撫でる。
精霊であり肉体を持たないセイは、抱きしめる腕も、撫でる手も、晴人をすり抜けていってしまい、セイの温もりが晴人に伝わることはない。それでも晴人は触れられている箇所からじんわりと優しさがにじんでいくように感じられた。
その場に座り込み、晴人は勝手に流れてしまう涙を止めようと深呼吸を続ける。
口を開けば嗚咽にしかならなさそうで、ただ息を吸って吐き出すことだけに集中した。
セイは黙って晴人の頭を撫で続けていた。回数を重ねればいつか温もりが届くとでもいうように、何度も何度も繰り返す。
やがて晴人も落ち着き、セイに向けてどうにか笑顔を浮かべてみせると、セイも安堵したような微笑みを返した。
「あんた、本当に神子なんだね。お疲れ様」
突然、小ばかにしたような声が響いた。晴人がびくっと身をすくませて声の方向を伺うと、そこには美少女だと勘違いしてしまったインプの姿があった。
「昨日のインプ……?」
「そうだよ。あんたが突き放したインプさ。床に叩きつけられて痛かったんだから」
「あ……ごめん……悪かった……」
思わず晴人が謝ると、インプは顔をしかめた。
「……なに謝ってるのさ。とにかく、この沼を浄化しちゃうなんて、まさかと思ったけど本当に神子だったんだね。ずいぶんと素敵な格好になっちゃったみたいだけど」
言われて晴人は自らの服に目をやる。上半身はほとんど見る影もなく、下半身も前側だけはどうにか大切なところを隠せているといった有様だ。後ろから見れば、尻は丸出しだろう。
「恥ずかしい? じゃあ、オレからの贈り物を受け取って」
晴人の目の前に一着の服が広げられる。何の変哲もない、ごく普通の布の服だ。晴人の体型にも合いそうな大きさだった。
「あ、ありがとう……」
差し出された服を晴人は手に取る。
このインプが何故このような贈り物をしてくれるのかはわからないが、今の恥ずかしい姿から逃れられるなら歓迎だった。
「ハルト!」
しかしセイの叫びが晴人の心を凍らせる。この服に罠でもあるのだろうかと、晴人は反射的に服から手を離す。
服は地面に落ちそうになるが、インプはその前に拾い上げて晴人の肩にかけた。
「ほら、落ちて泥だらけになったらもったいないだろう。服には何の仕掛けもないから安心しなよ。オレがもらうのは違うモノ。あんたがオレの贈り物を受け取ったから、オレはあんたからひとつもらっていく。たった今、あんたが得ようとした力をね」
くすくすと笑いながら、インプは片手を空中にかざした。その手の中に小さな黒い塊が現れる。
インプは黒い塊を見て満足そうに目を細めると、飲み込んでしまった。
「魔晶石、もらったよ。あんたからのお返し、オレも満足した。お互い、いい取り引きができたね」
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