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08.晴人の決意2
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「おおまかに分けて、貴族などの権力者連中と、神殿の二種類。前回と前々回はそれで苦労している。時間が長く経つほど魔素が広がって、人々が魔物化してしまったり、魔物が強くなったりしてしまうから、気をつけてね」
どうやら時間制限があるらしい。時間をかけるほど、ペナルティも発生していくということだろう。
「時間が経つほどって……どれくらい経つと危ないの?」
「そうだね……通常だと一週間くらいはまったく問題なしで、そこから徐々にってところかな。一ヶ月くらいまでならどうにかなると思うけれど、それを過ぎるとかなり大変になりそうだね」
「今までって、普通はどれくらいかかっていたの?」
「たいていは一週間そこそこで終わっていたみたいだね。邪魔が入ったときだと、一ヶ月以上かかったこともあるけれど」
一ヶ月以内とすると、猶予はそれほど長くないようだ。しかし今までが一週間そこそこで終わっていたというのなら、道のりもさほど長くないのだろう。
ただしこれまでが貞操を度外視しての行程であったことを考えると、貞操を守りたい晴人はもっと時間がかかってしまいそうだ。
「僕のおすすめは、やっぱり手っ取り早くヤられて強くなることだけどね。今回なら数日で終わると思うよ」
悩む晴人にありがたくない助言が授けられる。
「いや、それは却下」
そこは譲れないのだ。いくら時間制限があるとはいっても、貞操を犠牲にしたくはない。
もし時間を過ぎればかなり大変になるとはいっても、ゲームオーバーとは言わなかった。一ヶ月以上かかったこともあるというのだし、どうにか道のりはあるのだろう。
ならば、これ以上尻にまつわる新たな世界への扉は開かずに、元の世界への扉だけを開きたい。
「まあ、きみが貞操を守りたいっていうんだったら、頑張ってみるといい。いちおう、そのための道具もあげよう」
セイが両方の手のひらをそろえて上に向けると、空中に短剣が現れた。
晴人の肘から指先程度までの長さの短剣で、銀色に輝く鞘に収められている。柄も銀色で、全体が銀の光に包まれているようだった。
「この短剣は、浄化の力を持っている。これを使って魔物を浄化すると、きみの力と共鳴して、ほんのわずかだけれどきみの力にもなる」
「この短剣を使って魔物を倒すと、強くなれるってこと?」
短剣を受け取りながら、晴人は尋ねてみる。ひんやりと冷たい短剣は軽く、晴人の手になじんだ。
「そうだね。方法としては、相手を発情させておとなしくなったところで、短剣を使って浄化かな」
「結局、発情はさせなきゃいけないの……?」
うんざりとしながら晴人は問いかける。魔物は基本的にオスしかいないという。そんな魔物を発情させたら、襲われる可能性が高そうではないか。
「きみが短剣の扱いに慣れていて、短剣一本で魔物と渡り合う腕があるのなら別だけど」
「……ありません」
短剣など持つのも初めてだ。残念ながら、運動神経すらそれほどよいとはいえない。
「まあ、気楽にいくといい。もし魔物に負けたとしても、犯されるだけだから別に問題はないしね。一回ヤられてしまえば、きみもあきらめがつくだろう」
決して気楽になどなれない励ましを受け、晴人はぶるぶると身を震わせた。恐怖ややるせなさは、だんだん理不尽への怒りに転化されて晴人の心を燃やしていく。
「冗談じゃない! 俺は絶対に貞操を守りぬく!」
晴人の決意は空っぽの神殿に虚しく反響していった。
どうやら時間制限があるらしい。時間をかけるほど、ペナルティも発生していくということだろう。
「時間が経つほどって……どれくらい経つと危ないの?」
「そうだね……通常だと一週間くらいはまったく問題なしで、そこから徐々にってところかな。一ヶ月くらいまでならどうにかなると思うけれど、それを過ぎるとかなり大変になりそうだね」
「今までって、普通はどれくらいかかっていたの?」
「たいていは一週間そこそこで終わっていたみたいだね。邪魔が入ったときだと、一ヶ月以上かかったこともあるけれど」
一ヶ月以内とすると、猶予はそれほど長くないようだ。しかし今までが一週間そこそこで終わっていたというのなら、道のりもさほど長くないのだろう。
ただしこれまでが貞操を度外視しての行程であったことを考えると、貞操を守りたい晴人はもっと時間がかかってしまいそうだ。
「僕のおすすめは、やっぱり手っ取り早くヤられて強くなることだけどね。今回なら数日で終わると思うよ」
悩む晴人にありがたくない助言が授けられる。
「いや、それは却下」
そこは譲れないのだ。いくら時間制限があるとはいっても、貞操を犠牲にしたくはない。
もし時間を過ぎればかなり大変になるとはいっても、ゲームオーバーとは言わなかった。一ヶ月以上かかったこともあるというのだし、どうにか道のりはあるのだろう。
ならば、これ以上尻にまつわる新たな世界への扉は開かずに、元の世界への扉だけを開きたい。
「まあ、きみが貞操を守りたいっていうんだったら、頑張ってみるといい。いちおう、そのための道具もあげよう」
セイが両方の手のひらをそろえて上に向けると、空中に短剣が現れた。
晴人の肘から指先程度までの長さの短剣で、銀色に輝く鞘に収められている。柄も銀色で、全体が銀の光に包まれているようだった。
「この短剣は、浄化の力を持っている。これを使って魔物を浄化すると、きみの力と共鳴して、ほんのわずかだけれどきみの力にもなる」
「この短剣を使って魔物を倒すと、強くなれるってこと?」
短剣を受け取りながら、晴人は尋ねてみる。ひんやりと冷たい短剣は軽く、晴人の手になじんだ。
「そうだね。方法としては、相手を発情させておとなしくなったところで、短剣を使って浄化かな」
「結局、発情はさせなきゃいけないの……?」
うんざりとしながら晴人は問いかける。魔物は基本的にオスしかいないという。そんな魔物を発情させたら、襲われる可能性が高そうではないか。
「きみが短剣の扱いに慣れていて、短剣一本で魔物と渡り合う腕があるのなら別だけど」
「……ありません」
短剣など持つのも初めてだ。残念ながら、運動神経すらそれほどよいとはいえない。
「まあ、気楽にいくといい。もし魔物に負けたとしても、犯されるだけだから別に問題はないしね。一回ヤられてしまえば、きみもあきらめがつくだろう」
決して気楽になどなれない励ましを受け、晴人はぶるぶると身を震わせた。恐怖ややるせなさは、だんだん理不尽への怒りに転化されて晴人の心を燃やしていく。
「冗談じゃない! 俺は絶対に貞操を守りぬく!」
晴人の決意は空っぽの神殿に虚しく反響していった。
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