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03.ゲーム世界1
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「え……?」
晴人は呆然と目を見開き、間抜けな声を漏らす。
「性交を重ねるほど強くなれるって……そんな、ゲームのような……って、まさか、ゲームの世界に迷い込んだとでも……? いや、それこそまさかだよな……はは……きっと、就職活動で疲れているんだ。これは夢だ、夢」
もう一度眠れば、目が覚めるかもしれない。晴人は身を投げ出すように、床の上に寝転がる。ひんやりとした硬い感触が伝わってきて、ぶるぶると身を震わせた。
「すごいな……今日の夢は感覚までリアルだ……」
「まあ、夢でもいいんだけれどさ。目的を果たすまで、夢は覚めないよ」
無慈悲な声が晴人を現実逃避から引き戻す。
「目的って何だよ! 俺はどうやったら帰れるんだ!?」
涙があふれそうになるのをぐっとこらえ、晴人は声を張り上げる。わけがわからず、ただ悔しさと不安だけがこみあげてきて、叫ばずにはいられなかった。
「落ち着いて。そんなに難しいことじゃないから。まず、性交を重ねて強くなる。強くなったら魔物たちを倒しながら、目的地に行く。そこに元の世界に戻るための扉があるから、帰れる。それだけだよ」
影のゆったりとした口調が、ささくれだった晴人の心を穏やかに撫でていく。
「……俺は帰れるんだな?」
とりあえずいろいろな問題は置いておき、一番大切なことだけを確認する。狭くて乱雑で、しかし自分の居心地よくなじんだ部屋が恋しかった。
「うん、もちろん。場合によっては少し時間がかかるかもしれないけれど、元の世界ではほとんど時間が経っていないはずだから、急がなくても大丈夫」
先ほどは顔の形など判別できなかった影だが、だんだんと人の顔らしきものが見えるようになってきた。目を凝らせば、色こそ灰色のままだが、目鼻立ちが判別できる。切れ長の目に、すっと鼻筋が通った端正な顔立ちだ。
「……ちきしょう……イケメンなんて敵だ……」
「え?」
ぎりぎりと奥歯を噛み締めながら心の中で呟いたつもりが、声になっていたらしい。影が疑問符を浮かべる。
「……なんでもない」
すねたようにそっぽを向くと、影が不思議そうにゆらめく気配を感じた。やがて、何か思いついたように影が身を正す。
「……ああ、ごめん。やり直し。きみこそ、選ばれた神子だ! この世界を救えるのは、きみしかいない!」
高らかに張り上げられる声がうそ臭い。
「いや……いまさら、いいよ……」
がっくりとうなだれながら晴人は答える。いまさらそんなことを言われても、その気になどなれない。もう数年若ければ危なかったかもしれないが、自分は選ばれた特別な人間だと思い込むには、少々現実を知ってしまった。
「そう? じゃあ、とりあえず説明をしようか。まず僕の自己紹介から。僕はきみの案内役となる精霊のセイだ」
「俺は空井晴人。ごく普通の大学生……って、こっちで大学生ってわかるのかな。えっと、学生……学んでいる途中の人間……」
「大丈夫、わかるよ。ハルトだね、よろしく。僕はきみの旅に着いていくから、わからないことがあったらいつでも聞いて」
「うん、よろしく」
異世界に一人で放り出されるわけではないようだ。案内役として着いてきてくれることに安堵する。
晴人は呆然と目を見開き、間抜けな声を漏らす。
「性交を重ねるほど強くなれるって……そんな、ゲームのような……って、まさか、ゲームの世界に迷い込んだとでも……? いや、それこそまさかだよな……はは……きっと、就職活動で疲れているんだ。これは夢だ、夢」
もう一度眠れば、目が覚めるかもしれない。晴人は身を投げ出すように、床の上に寝転がる。ひんやりとした硬い感触が伝わってきて、ぶるぶると身を震わせた。
「すごいな……今日の夢は感覚までリアルだ……」
「まあ、夢でもいいんだけれどさ。目的を果たすまで、夢は覚めないよ」
無慈悲な声が晴人を現実逃避から引き戻す。
「目的って何だよ! 俺はどうやったら帰れるんだ!?」
涙があふれそうになるのをぐっとこらえ、晴人は声を張り上げる。わけがわからず、ただ悔しさと不安だけがこみあげてきて、叫ばずにはいられなかった。
「落ち着いて。そんなに難しいことじゃないから。まず、性交を重ねて強くなる。強くなったら魔物たちを倒しながら、目的地に行く。そこに元の世界に戻るための扉があるから、帰れる。それだけだよ」
影のゆったりとした口調が、ささくれだった晴人の心を穏やかに撫でていく。
「……俺は帰れるんだな?」
とりあえずいろいろな問題は置いておき、一番大切なことだけを確認する。狭くて乱雑で、しかし自分の居心地よくなじんだ部屋が恋しかった。
「うん、もちろん。場合によっては少し時間がかかるかもしれないけれど、元の世界ではほとんど時間が経っていないはずだから、急がなくても大丈夫」
先ほどは顔の形など判別できなかった影だが、だんだんと人の顔らしきものが見えるようになってきた。目を凝らせば、色こそ灰色のままだが、目鼻立ちが判別できる。切れ長の目に、すっと鼻筋が通った端正な顔立ちだ。
「……ちきしょう……イケメンなんて敵だ……」
「え?」
ぎりぎりと奥歯を噛み締めながら心の中で呟いたつもりが、声になっていたらしい。影が疑問符を浮かべる。
「……なんでもない」
すねたようにそっぽを向くと、影が不思議そうにゆらめく気配を感じた。やがて、何か思いついたように影が身を正す。
「……ああ、ごめん。やり直し。きみこそ、選ばれた神子だ! この世界を救えるのは、きみしかいない!」
高らかに張り上げられる声がうそ臭い。
「いや……いまさら、いいよ……」
がっくりとうなだれながら晴人は答える。いまさらそんなことを言われても、その気になどなれない。もう数年若ければ危なかったかもしれないが、自分は選ばれた特別な人間だと思い込むには、少々現実を知ってしまった。
「そう? じゃあ、とりあえず説明をしようか。まず僕の自己紹介から。僕はきみの案内役となる精霊のセイだ」
「俺は空井晴人。ごく普通の大学生……って、こっちで大学生ってわかるのかな。えっと、学生……学んでいる途中の人間……」
「大丈夫、わかるよ。ハルトだね、よろしく。僕はきみの旅に着いていくから、わからないことがあったらいつでも聞いて」
「うん、よろしく」
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