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64.問題

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 領主屋敷を出たヴァレンは、まずエアイールのところに向かった。すでに早朝といえる時間は過ぎているが、この島ではまだまだ夢の中にいる者が多い時間だ。
 それでもエアイールは起きていた。昨日と同じように、ロシュと二人でお茶を飲んでいる。

「おはようございます!」

 扉を叩くなり、すぐに部屋の中まで踏み込んだヴァレンは、元気に声を張り上げた。

「お……おはよう……」

「……おはようございます」

 呆気に取られた様子のロシュと、気だるそうなエアイールが挨拶を返してくる。
 しかし、エアイールの瞳にわずかな焦りが浮かんでいるのを、ヴァレンは見逃さなかった。

「さっき、ネヴィルに会ったよ。今は感動の再会やってる」

 これまでの説明よりも先に、ヴァレンはエアイールの心配事を解消するべく、口を開く。

「ああ……そうですか……」

 ゆっくりと安堵の吐息を漏らし、エアイールは呟いた。内容について突っ込んでくることはなく、ひとまず心配はいらないとだけ判断したようだ。

「えっと、ロシュさん。昨日は放り出してしまって、ごめんなさい」

 とりあえずエアイールの不安は払拭されたようなので、ヴァレンは本題に入る。

「いや、大丈夫だよ。むしろ、いろいろ良くしてもらって……いくら礼を言っても足りないくらいだ」

 ロシュは怒っている様子などかけらもなく、むしろやや気後れしたように答えた。

「エアイールも、いろいろとありがとう。後で何か礼をするよ」

「期待しないで待っていますよ」

 すっかり落ち着きを取り戻したエアイールは、わずかに微笑む。
 先ほどまでもロシュの手前、表面上はいつもどおりに振る舞っていたのだろう。しかし、内心はネヴィルの姿が見当たらないと心配していたようだ。
 詳しい状況は話していないものの、ヴァレンがネヴィルのことに触れたから大丈夫だと安心できたらしい。

 それから、ヴァレンの分もお茶が用意され、三人でこれまでのことを話すこととなった。
 とはいってもヴァレンは、ロシュの前では詳しいことを話すわけにはいかない。急用ができたが、無事に終わったとだけ伝えた。
 多くを語ることになったのは、ロシュだ。
 島の社交場を回って、人脈作りは順調に進んだらしい。ただ、ひとつだけ解決法が見つからない問題があるという。
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