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63.これから

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 二人を残して、ヴァレンは今度こそ領主屋敷に向かう。
 すると、ヴァレンがやってくるのを見抜いていたかのように、領主が迎えてくれた。

「あなたが連れてきた子、ネヴィルの従者として中に入れるといいわ。ずっとお留守番じゃあ、かわいそうでしょうからね」

 ヴァレンが何か言うよりも早く、領主がお許しをくれる。
 やや面食らいながら、ヴァレンは何を言うべきかと考えをめぐらせる。
 島を一時的とはいえ出たことや、ミゼアスを助けたことなど、おそらく領主は全てを知っているのだろう。だとすれば、どうするべきか。

「……ありがとうございます。じゃあ、そういうわけで」

「ええ」

 ヴァレンが礼を述べて話を打ち切ると、水色のヴェールからのぞく領主の口元が微笑みを形作る。
 そのままの流れで退出しながら、ヴァレンはこれで自分の将来も決まってしまったと、ゆっくりと息を吐き出した。
 頭を全開にしているヴァレンは、自分の言葉と領主の承諾の意味を理解している。言葉を連ねなくとも、一言で互いに理解しあえるのは幸か不幸か、どちらなのだろう。
 何はともあれ、ヴァレンは白花引退後、領主の養子となることが決まったのだ。

 少しだけ暗い気分になってしまったが、ヴァレンはすぐに思いを振り払う。
 人生はなるようにしかならない。流れに身を任せ、そのなかで楽しく過ごせるようにするだけのことだ。
 それに、ミゼアスの弟になれるというのは悪い話ではない。今でもすでに家族同然ではあるが、書類上もそうなるというのは何となく心が浮き立つ。紙切れ一枚といってしまえばそれまでだが、嬉しいものは嬉しいのだから、深く考える必要もないだろう。

 まだ、ロシュへの対応やエアイールへの礼、そして見習いたち宛ての手紙など、片付けるべきことは残っている。
 すでに決まってしまったことをどうこう考えるよりも、これからするべきことを考えようと、ヴァレンは普段どおりの足取りで領主屋敷を出た。
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