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49.朝
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「ん……」
額に何かが触れる感覚で、ヴァレンの意識はぼんやりと浮かび上がってくる。
夢うつつのまま目を開ければ、緑色の瞳がヴァレンを見つめていた。幼さを残す美貌と、金色の髪もヴァレンの視界に入ってくる。
「……ミゼアス兄さん?」
今の状況も思い出せないまま、ヴァレンは幼い頃から慣れ親しんだ人の名を呼ぶ。
「ちっ、違います! 僕はミゼアスじゃありません! もう名を騙ることはしません……だから、お許しください……!」
しかし返ってきたのは、悲痛ともいえる叫びだった。
驚きのあまり、ヴァレンの意識は急激に呼び覚まされる。
はっきりと覚醒した状態で、ヴァレンは己の現状を思い起こす。男に召抱えられることになってしまい、散々に弄ばれたのだ。
その後、意識を失うように眠りに着いたのだが、そのときは他に誰もいなかった。今は目の前に一人の少年がいる。
もう一度よく見てみれば、ミゼアスにもどことなく似ているが、別人だ。
何より、瞳の強さと顔つきが違う。常に凛としていたミゼアスとは違い、目の前の少年はびくびくと怯えて頼りなげな視線をうろうろとさまよわせている。
これが、ミゼアスのニセモノなのだろう。
どういう状況かわからなかったが、ひとまずヴァレンは寝台の上で身を起こした。
身体の節々が少し痛んだが、思ったほどではない。何よりも、汗や体液でベタベタになっていたはずの身体がさっぱりとしているようだ。
「……もしかして、綺麗にしてくれた?」
ヴァレンが少年に尋ねてみると、少年はおどおどとしながらも首をこくんと縦に振って頷いた。
「あなたの後始末をしろっていう命令だったので……」
「そっか、ありがとう」
礼を言いながら、ヴァレンは扉に視線を向ける。
少年が入ってきたということは、もしかしたら鍵が開いていないだろうかと、かすかな期待を抱く。
「あ……この部屋には鍵がかかっています。僕を放り込んだ後に鍵をかけて、後で食事は運んでやるって……」
わずかな期待は、少年の言葉によってあっさりと打ち砕かれた。
とはいっても、もともとさほど大きな期待はなかったので、ヴァレンもそっかと頷いただけだ。
「今って、何時くらいなんだろう? もう朝?」
「そろそろ、夜が明ける頃だと思います。さっき、雲雀の鳴き声が聞こえてきたので……」
「朝、か……夜鳴鶯の鳴き声ってことは……ないだろうなあ」
苦笑しながらヴァレンは立ち上がり、脱ぎ捨ててあった服を身につけていく。少しの疲労は残るものの、動くのに問題はなさそうだった。
額に何かが触れる感覚で、ヴァレンの意識はぼんやりと浮かび上がってくる。
夢うつつのまま目を開ければ、緑色の瞳がヴァレンを見つめていた。幼さを残す美貌と、金色の髪もヴァレンの視界に入ってくる。
「……ミゼアス兄さん?」
今の状況も思い出せないまま、ヴァレンは幼い頃から慣れ親しんだ人の名を呼ぶ。
「ちっ、違います! 僕はミゼアスじゃありません! もう名を騙ることはしません……だから、お許しください……!」
しかし返ってきたのは、悲痛ともいえる叫びだった。
驚きのあまり、ヴァレンの意識は急激に呼び覚まされる。
はっきりと覚醒した状態で、ヴァレンは己の現状を思い起こす。男に召抱えられることになってしまい、散々に弄ばれたのだ。
その後、意識を失うように眠りに着いたのだが、そのときは他に誰もいなかった。今は目の前に一人の少年がいる。
もう一度よく見てみれば、ミゼアスにもどことなく似ているが、別人だ。
何より、瞳の強さと顔つきが違う。常に凛としていたミゼアスとは違い、目の前の少年はびくびくと怯えて頼りなげな視線をうろうろとさまよわせている。
これが、ミゼアスのニセモノなのだろう。
どういう状況かわからなかったが、ひとまずヴァレンは寝台の上で身を起こした。
身体の節々が少し痛んだが、思ったほどではない。何よりも、汗や体液でベタベタになっていたはずの身体がさっぱりとしているようだ。
「……もしかして、綺麗にしてくれた?」
ヴァレンが少年に尋ねてみると、少年はおどおどとしながらも首をこくんと縦に振って頷いた。
「あなたの後始末をしろっていう命令だったので……」
「そっか、ありがとう」
礼を言いながら、ヴァレンは扉に視線を向ける。
少年が入ってきたということは、もしかしたら鍵が開いていないだろうかと、かすかな期待を抱く。
「あ……この部屋には鍵がかかっています。僕を放り込んだ後に鍵をかけて、後で食事は運んでやるって……」
わずかな期待は、少年の言葉によってあっさりと打ち砕かれた。
とはいっても、もともとさほど大きな期待はなかったので、ヴァレンもそっかと頷いただけだ。
「今って、何時くらいなんだろう? もう朝?」
「そろそろ、夜が明ける頃だと思います。さっき、雲雀の鳴き声が聞こえてきたので……」
「朝、か……夜鳴鶯の鳴き声ってことは……ないだろうなあ」
苦笑しながらヴァレンは立ち上がり、脱ぎ捨ててあった服を身につけていく。少しの疲労は残るものの、動くのに問題はなさそうだった。
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