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41.賭博場

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 日が沈み、にぎやかだった街が静かになっていく頃、反対に活気を帯びていく場所があった。酒場や賭博場、娼館などが立ち並ぶ一画である。
 ヴァレンはその中のひとつである、賭博場にやってきていた。

 不夜島ほどではないものの、客層はそれなりに良さそうだ。そこそこに身なりの良い男たちが、酒を飲みながら陽気に賭け事をしている。
 イーノスとの打ち合わせで、この賭博場に『風月花』の所有者を誘導してもらうことになっている。彼らがやってくるまでに、少し馴染んでおいたほうがいいだろう。

「こんにちはー」

 ヴァレンは適当なカード賭博の輪に入っていく。
 見かけだけなら美少年のヴァレンに好色な眼差しを向ける者もいたが、特に問題もなく輪の中に迎えられた。
 目的は金を稼ぐことではないので、手持ちの小銭を減らさないように、小さな勝ちをいくつか重ねていく。大きな目立ち方をする必要はなく、大勝ちも控えるべきだと、ヴァレンはほどほどの勝利者を目指す。
 幸いなことに手練れの相手はいないようで、ヴァレンの思惑どおりに進んでいった。

「兄ちゃん、なかなかツキがあるようだな。一杯、どうだい?」

 賭け事をしていた男の一人が、ヴァレンに声をかけてくる。酒の入った杯を渡されたので、ヴァレンはぐっと一気にあおる。

「おお、いい飲みっぷりだな。そして、これで挑戦を受けたってことだな!」

 男が宣言すると、周囲がどっと沸く。はやし立てる声や、口笛の音が響いた。
 しかしヴァレンには何のことだかわからず、杯を持ったまま、首を傾げる。

「ああ、兄ちゃんは初めてかい? ここでは杯を渡されて受け取ったら、一対一の挑戦が成立したことになるんだ。つまり、これから俺と一対一で勝負してもらう」

 ヴァレンの様子に気づいたようで、男が説明する。
 少し面倒なことになったと思ったが、周囲の盛り上がりを見ると辞退は難しそうだ。仕方なく、ヴァレンは受け入れることにする。

「はあ……勝負の内容は何だろう?」

「ここに、同じカードが二枚ずつ入ったものがある。これを裏返しにして交互に二枚ずつめくり、同じカードを引き当てたら取ることができる。全て終わった時点でカードを多く持っているほうが勝ちだ」

 男の説明を聞きながら、ずいぶんとヴァレンにとって都合のよい内容だと拍子抜けしてしまう。これならば、枚数の操作も容易だろう。

「そして負けた側は、勝った側に酒を一杯おごる。その酒を飲み干した時点で、勝者が確定するのさ。砂時計が落ちるまでに飲みきれなかった場合は、逆転して敗者となる。かけ金も没収だ」

 さらに飲み比べのような要素もあるらしい。
 男が指し示した砂時計を見れば、砂の量と容器のくびれ部分の形から、おそらく一分程度といったところだろう。しかし、やはりヴァレンにとって有利であることにかわりはない。
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