ヴァレン兄さん、ねじが余ってます 2

四葉 翠花

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30.再会

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「……なんですか、その数日振りに会ったかのような軽い挨拶は」

 整った顔をかすかに歪め、マリオンが呆れた声を出す。

「あっはっは、まあいいじゃないですか。それより俺のこと、覚えてました?」

「……忘れるはずがないでしょう。大きくなりましたね」

 苦渋を噛み締めながらも、わずかに安堵がにじむ複雑な表情でマリオンが微笑む。
 今にも泣きそうなほど唇は歪んでいたが、ヴァレンを見つめる瞳には優しい光が宿っていた。

 かつてマリオンは、ヴァレンに薬を盛ったことがあったのだ。
 最年少で五花となったミゼアス付きでありながら致命的に花月琴の才能が欠けており、二花止まりといわれているようなヴァレンはふさわしくない、とのことだった。
 ミゼアス付きにふさわしく花月琴の才能を開花させるか、そうでなければ潰れてしまえばいいということで、マリオンが花月琴の才能を開花させるきっかけとなった出来事を再現させるべく、薬を盛られたのだ。

 結果として、ヴァレンは少し苦しんだだけで終わった。命に別状はなく、花月琴の才能を開花させることもなかった。
 そしてその出来事がきっかけとなり、マリオンは島を去ることになったのだ。

 もっともヴァレンにとっては、すでに過ぎ去ったことだ。マリオンに対する恨みなどない。
 もともと、マリオンがミゼアスに対して抱いていた想いを考えれば、当時から怒りすらわかなかったものだった。
 敵意がないことを示すように、ヴァレンは満面の笑みを浮かべてマリオンの様子を伺う。
 マリオンはしばし感慨深そうにヴァレンを眺めていたが、ややあってはっと気づいたように眉根を寄せる。

「いえ、それよりもあなた、何故ここに? まさか島を出たのですか?」

 マリオンはヴァレンの手に視線を向けた。四つの花が刻まれた手の甲がさらけ出されている。途端にマリオンは目を見開き、ヴァレンの手をつかみ上げる。

「四花の証……! これが消えていないということは、正当に島を出たわけではありませんね? いったいどういうことですか!」

「ちょっ……マリオン兄さん、落ち着いてくださいよ」

「これが落ち着いていられますか! まさか脱走など……」

「いえ、脱走じゃあ……」

 もめあっていると、奥から誰かが出てきた。
 その姿を見て、ヴァレンは笑顔を向ける。

「ジェスさん、お久しぶりですー!」
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