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23.解決の糸口

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「ヴァレン……? どうしたんだい?」

 不安そうなネヴィルの声で、ヴァレンははっと我に返る。
 振り返れば、ネヴィルもアルンも心配そうにヴァレンを伺っていた。じっと黙ったままだったエアイールも、わずかに眉を寄せてヴァレンを見つめている。

「もしかして、ミゼアス兄さんに何か……?」

 顔を青ざめさせながら、アルンがおそるおそる尋ねてくる。

「……確かに、ミゼアス兄さんのことだけれど、心配はいらないよ。ただ、急ぎの用件らしくて、どうするべきか考え込んじゃっただけ」

 自らの不安はすべて押し隠し、ヴァレンは微笑んでアルンの頭を撫でる。
 強張っていたアルンの身体から力が抜け、長く息を吐く音が響いた。どうにかごまかせたようだ。

「ネヴィル、悪いけれど急用ができたから、花月琴のことはちょっと待って。滞在中にはどうにかするから。エアイール、悪いけれど……」

「構いませんよ。後のことはお任せください」

 ヴァレンの言葉を途中で遮り、エアイールは頷く。
 さすがにエアイールはただごとではないと思ったのだろう。察しのよいエアイールに感謝し、ヴァレンは頷きを返す。
 後のことはエアイールに任せれば、心配はいらないだろう。ヴァレンは、暑さのために開け放たれたままだった窓に向かって走っていく。

「ちょっ……ヴァレン……?」

「ヴァレン!」

 ネヴィルとエアイールの声が響き、やや遅れてヴァレンを止めようと二人が追いかけてくる。まるで見習い時代に戻ったようだと、こんな状況であるにも関わらず、ヴァレンは懐かしくなってくすりと笑ってしまう。
 しかし今回はヴァレンが最初から本気を出していることと、二人の反応が遅れたこともあって、ヴァレンを止めることはできない。
 ヴァレンは床を蹴りつけ、窓から外へと飛び出した。

「ヴァレン兄さん! 窓から飛び出すなんて、お行儀が悪いですよ! それにここは三階です!」

 後ろから妙に冷静なアルンの声が響いたが、もはや空中に舞っているヴァレンを止められるものは何もない。

「どいて、どいてー!」

 大通りを歩く人々に向かって叫びながら、ヴァレンは身体を回転させて着地に備える。
 宙を舞う高揚感と、迫り来る地面への危険と隣り合わせの爽快感がヴァレンを包む。常と違う状態で、普段は眠らせている頭はすでに完全稼動だった。
 飛び降りてから地に着くまでのわずかな時間で、ヴァレンは先ほど中断した思考を再開する。
 王都の名医と魔術医が現れた時間、そしてウインシェルド侯爵の行動。
 とっくにヴァレンの中では答えが出ている問題だった。

 ウインシェルド侯爵は、魔術医を連れてきてなどいない。
 ミゼアスを治療した者がいるのは、この島だ。
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