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07.およめさん
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「お客様、お手拭きをどうぞ」
「お疲れではありませんか? マッサージしましょうか?」
「足置きはいかがですか?」
三人衆がわらわらとロシュに群がっていく。ぽかんとした表情でロシュは固まっていた。
「ああ、きみたち。あまり困らせるものじゃないよ」
くすくすと笑いながら、ヴァレンはいちおう口先だけの注意を与える。
「ごめんね、ロシュさん。この子たち、ミゼアス兄さん付きだったんだよ。ジェスさんがこの島に来たときにも会っているし。もしよかったら、ミゼアス兄さんやジェスさんと会ったときのこと、聞かせてもらえないかな。ロシュさんはジェスさんと同級生だったらしいけれど、定期的に会ったりしていたの? それとも、偶然の再会?」
「ああ……ジェスとは卒業以来会っていなかったけれど、偶然再会したんだ。それが可愛い子を連れていて、『およめさん』だって……」
「……『およめさん』!?」
三人衆が目を見開いて叫ぶ。ロシュがびくっと身をすくませた。
「あー、はいはい、きみたち、落ち着いてねー。ミゼアス兄さんは島を出て行ったんだ。そりゃあ、『およめさん』にだってなっちゃうよね」
「ミゼアス兄さんが……」
「まさか……」
「お……およめ、さん……」
呆然と呟く三人衆。ヴァレンはミゼアスがまだ弱々しさを残していた時代を知っているが、この三人は白花の頂点に堂々と君臨するミゼアスの姿しか知らない。想像がつきにくいのだろう。
「だってさ、ミゼアス兄さんとジェスさんだったら、どっちが『およめさん』になると思う?」
「……確かに、それはそうですけれど……」
釈然としない様子でアルンが呟く。頭ではわかっているのだが、感情がついていかないといったところだろうか。
「ロシュさん、ミゼアス兄さんとジェスさんは幸せそうだった?」
「え? ああ、そりゃあ、もう。二人とも仲睦まじくて、独り身には見ているのがちょっとつらいくらいだったよ。ローダンデリア領主も、似たようなことを言っていたな」
「ローダンデリア領主といえば、俺の従兄だったね。会ったことはないけれど」
ヴァレンの母は、夕月花の産地であるローダンデリアの出身だった。そのこともつい先日知ったのだが、ヴァレンの母は前領主の妹で、現領主はヴァレンの従兄にあたる。
「そうだったね。顔は似ていないけれど、雰囲気は似ているな。話し方も似ているし、むしろ顔以外はかなりそっくりかも。気さくで、明るくて、でもときどき突拍子もないようなことを言い出す人だったよ」
「お疲れではありませんか? マッサージしましょうか?」
「足置きはいかがですか?」
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くすくすと笑いながら、ヴァレンはいちおう口先だけの注意を与える。
「ごめんね、ロシュさん。この子たち、ミゼアス兄さん付きだったんだよ。ジェスさんがこの島に来たときにも会っているし。もしよかったら、ミゼアス兄さんやジェスさんと会ったときのこと、聞かせてもらえないかな。ロシュさんはジェスさんと同級生だったらしいけれど、定期的に会ったりしていたの? それとも、偶然の再会?」
「ああ……ジェスとは卒業以来会っていなかったけれど、偶然再会したんだ。それが可愛い子を連れていて、『およめさん』だって……」
「……『およめさん』!?」
三人衆が目を見開いて叫ぶ。ロシュがびくっと身をすくませた。
「あー、はいはい、きみたち、落ち着いてねー。ミゼアス兄さんは島を出て行ったんだ。そりゃあ、『およめさん』にだってなっちゃうよね」
「ミゼアス兄さんが……」
「まさか……」
「お……およめ、さん……」
呆然と呟く三人衆。ヴァレンはミゼアスがまだ弱々しさを残していた時代を知っているが、この三人は白花の頂点に堂々と君臨するミゼアスの姿しか知らない。想像がつきにくいのだろう。
「だってさ、ミゼアス兄さんとジェスさんだったら、どっちが『およめさん』になると思う?」
「……確かに、それはそうですけれど……」
釈然としない様子でアルンが呟く。頭ではわかっているのだが、感情がついていかないといったところだろうか。
「ロシュさん、ミゼアス兄さんとジェスさんは幸せそうだった?」
「え? ああ、そりゃあ、もう。二人とも仲睦まじくて、独り身には見ているのがちょっとつらいくらいだったよ。ローダンデリア領主も、似たようなことを言っていたな」
「ローダンデリア領主といえば、俺の従兄だったね。会ったことはないけれど」
ヴァレンの母は、夕月花の産地であるローダンデリアの出身だった。そのこともつい先日知ったのだが、ヴァレンの母は前領主の妹で、現領主はヴァレンの従兄にあたる。
「そうだったね。顔は似ていないけれど、雰囲気は似ているな。話し方も似ているし、むしろ顔以外はかなりそっくりかも。気さくで、明るくて、でもときどき突拍子もないようなことを言い出す人だったよ」
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