不夜島の少年～兵士と高級男娼の七日間～

137．気のいい連中

　アデルジェスの部屋は四人部屋だ。先日小隊長に昇進したので、小さいながらも一人部屋に移れるはずだったのだが、不夜島から戻ってからということになっていた。そのため、まだ四人部屋のままである。
　しかも部屋は狭い。簡素な寝台と荷物置き場があるくらいで、ミゼアスの豪華な部屋とは比べ物にならない狭さだ。

　アデルジェスが荷物をまとめている間、ミゼアスは寝台に座って物珍しそうに部屋を眺め回していた。
　廊下から同僚たちが遠巻きに中を伺っているのが見える。同室の者はミゼアスに飲み物を持ってきたりしていた。だがアデルジェスには何も持ってこない。

　ミゼアスは楽しそうだった。アデルジェスの同僚たちの質問にはにかみながら答え、ときには質問もしていた。
　以前だったら嫉妬したかもしれない状況だったが、今はミゼアスが楽しそうで良かったなくらいの思いしか持たない。そのこともアデルジェスには少々驚きだった。ほんの数日間で変わるものだとおかしくなる。

　荷物をまとめ終える頃には、ミゼアスが今までの経緯をアデルジェスの同僚たちにすっかり説明し終えていた。
　もちろん、言ってはならないようなことは隠してある。アデルジェスが幼馴染のフェイちゃんと再会し、これから一緒に暮らすのだという内容だ。フェイちゃんを引き取ってくれた親の元に行くので、アデルジェスは兵士を辞めることになったと説明した。

「さっさと出て行け！」

「もう帰ってくるなよ！」

　同僚たちは、アデルジェスを追い出しにかかる。

「お嬢さんを大切にな」

「泣かせたら承知しないぞ」

　ただ、こういった言葉も中には交ざっていた。

「またそのうち遊びに来いよ」

　さらに、温かい言葉もあった。
　追い出しにかかっていた者も含めて、皆が笑顔で送り出してくれている。

「ああ……ありがとう。じゃあな」

　口が悪いところはあるが、気のいい連中ばかりだと思う。アデルジェスは頷いて、別れの言葉を述べた。