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121.およめさん

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「……嫌?」

 瞳を潤ませてミゼアスが見上げてくる。

「い……いや、俺でよければ……その……」

 アデルジェスは赤くなって俯く。これから一緒に暮らしていくつもりではあったのだし、問題があるわけではない。
 しかし『お嫁さん』という言葉には、どうも照れを感じた。

「じゃあ、僕をおよめさんにしてくれる?」

「う……うん……」

 俯きながら答えると、ミゼアスがアデルジェスの足下にうずくまり、膝に頭をもたせかけてきた。

「……僕が今まで何をしてきたか、知っているよね? それでもいいの? 本当に? 本当に僕をおよめさんにしてくれるの?」

 不安げな声で確認してくるミゼアスに、アデルジェスは心が痛んだ。今までのことがどれだけミゼアスの中に傷として残っているのだろう。
 この国の一般的な基準からすれば、ミゼアスの過去などそれほど気になることではないはずだ。まして不夜島の五花というのなら、むしろアデルジェスごときにはもったいなさすぎる高嶺の花だろう。

 普段は凛としていて、頭も良いミゼアス。それがふとしたとき、まるで幼い子供のようになり、不安げな態度を見せる。ミゼアスの中の一部は、親に捨てられた子供の状態で止まってしまっているのだろう。
 この傷を癒してあげたかった。

「当たり前だよ。その……俺でよければ、お……お嫁さんになって……」

 照れて真っ赤になりながら言うと、ミゼアスが顔を輝かせて抱きついてきた。

「ありがとう……! 嬉しい……! 僕、頑張って料理も覚えるからね」

 アデルジェスは以前、料理ができればよいお嫁さんになれそうかと思ったのに、とからかったことがある。そのことを覚えていたらしい。
 ミゼアスは健気で、ひたむきにアデルジェスのことを愛してくれている。アデルジェスは信じられないような幸福感と、いたましさに包まれながら、ミゼアスを抱きしめた。
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