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53.重なる思い出
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アデルジェスは色々と考えながら、ふと『五年以上』という言葉を思い出す。
客を取り始めるのが十二歳くらいだというから、もしそのときから使い始めていれば現在は十七歳くらいだろうか。
相当な童顔だが、ありえないことはない。それに、すでに何回か身体を重ねた身としてはそのくらいの年齢のほうがありがたい。これで十三、四歳だといわれたら子供に手を出した罪悪感に苛まれそうだ。今さらな話ではあるが。
二歳差なら、完全に許容範囲だ。ある意味、とてもちょうどよい。
「……どうかした?」
不思議そうにミゼアスが尋ねてくる。
「あ……いや、何でもない……」
つい自分の考えに沈みこんでしまったようだった。アデルジェスは今までの思考に決まりが悪くなり、俯く。
「……? まあ、いいけれど。次はもっと楽しい曲にしようか。それとも、何か好きな曲ある?」
「えっと……村祭りで踊っていたような曲が思い浮かんだけれど、曲名がわからないな……」
「ふぅん……こんな曲?」
ミゼアスは小首を傾げ、何小節か演奏する。素朴で陽気な旋律が流れた。アデルジェスにとっては懐かしい曲だった。
「あ、そう! これ! よくわかったね」
「祭りの定番曲だからね。『子馬よ、踊れ』っていう曲だよ。地域によって色々編曲されているけれど、この国全体で広く愛されている曲だね」
そう説明して、ミゼアスは曲を奏で始めた。
草原を楽しげに駆け回る子馬が浮かんでくるようだった。さわやかな風が吹き抜けてくるようで、その風になびくかのごとく花びらが舞い始める。
アデルジェスの記憶にある村祭りの曲そのものだった。大人も子供も、みんなで楽しく踊った記憶がよみがえる。
あの子も踊り、そして小さな手で一生懸命楽器を演奏しようとしていた。その姿がふとミゼアスと重なり、アデルジェスは目を見開く。
ミゼアスは少女じみた繊細な美貌の持ち主ではあるが、男だ。こうしてじっくり見ても、可愛らしいがやはり男に見える。
そもそも、全裸姿も見ているのだし疑いようがない。
あの子と同じく、ミゼアスも金髪に緑色の瞳だ。だから重なったのかと、アデルジェスは妙に脈打つ胸を押さえた。
客を取り始めるのが十二歳くらいだというから、もしそのときから使い始めていれば現在は十七歳くらいだろうか。
相当な童顔だが、ありえないことはない。それに、すでに何回か身体を重ねた身としてはそのくらいの年齢のほうがありがたい。これで十三、四歳だといわれたら子供に手を出した罪悪感に苛まれそうだ。今さらな話ではあるが。
二歳差なら、完全に許容範囲だ。ある意味、とてもちょうどよい。
「……どうかした?」
不思議そうにミゼアスが尋ねてくる。
「あ……いや、何でもない……」
つい自分の考えに沈みこんでしまったようだった。アデルジェスは今までの思考に決まりが悪くなり、俯く。
「……? まあ、いいけれど。次はもっと楽しい曲にしようか。それとも、何か好きな曲ある?」
「えっと……村祭りで踊っていたような曲が思い浮かんだけれど、曲名がわからないな……」
「ふぅん……こんな曲?」
ミゼアスは小首を傾げ、何小節か演奏する。素朴で陽気な旋律が流れた。アデルジェスにとっては懐かしい曲だった。
「あ、そう! これ! よくわかったね」
「祭りの定番曲だからね。『子馬よ、踊れ』っていう曲だよ。地域によって色々編曲されているけれど、この国全体で広く愛されている曲だね」
そう説明して、ミゼアスは曲を奏で始めた。
草原を楽しげに駆け回る子馬が浮かんでくるようだった。さわやかな風が吹き抜けてくるようで、その風になびくかのごとく花びらが舞い始める。
アデルジェスの記憶にある村祭りの曲そのものだった。大人も子供も、みんなで楽しく踊った記憶がよみがえる。
あの子も踊り、そして小さな手で一生懸命楽器を演奏しようとしていた。その姿がふとミゼアスと重なり、アデルジェスは目を見開く。
ミゼアスは少女じみた繊細な美貌の持ち主ではあるが、男だ。こうしてじっくり見ても、可愛らしいがやはり男に見える。
そもそも、全裸姿も見ているのだし疑いようがない。
あの子と同じく、ミゼアスも金髪に緑色の瞳だ。だから重なったのかと、アデルジェスは妙に脈打つ胸を押さえた。
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