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48.四花の少年

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「ただいま」

 娼館主のところに行くと言って出て行ったミゼアスは、あっさりと戻ってきた。

「特にこれといったことはなかったよ。昨日の失態をやらかした子は館内の掃除など、まあ普通の罰だね。願掛けしていた子については不明。買い物しようとして捕まった子はいないらしいから、とりあえずまだお金は使っていないみたい。最近売られてきた子でそれらしい子がいたら教えてとだけ言ってきた」

 そう言って、ミゼアスは長椅子に座るアデルジェスの隣に腰掛ける。

「食事も持ってくるように言っておいたから、もうすぐくるよ。今日はここで食べよう」

 アデルジェスに身体をすりよせながら言う。

「う、うん……」

 夜はもっと凄いことをしていたはずなのだが、この程度でも昼の日差しの下でだとやけに気恥ずかしく感じる。
 閉じていたはずの扉が、ほんのわずかに開きかけるような気持ちだった。
 ミゼアスはアデルジェスに身を持たせかけながら、何かを訴えるように見上げてくる。
 何をすればよいのかわからなかったが、とりあえずミゼアスの背中を撫でてみた。するとミゼアスが気持ちよさそうに目を細め、アデルジェスの胸に顔を埋める。

「失礼しまーす、お食事お持ちしましたー」

 すると扉を叩く音がし、元気な声と共に返事を待つこともなく扉が開いた。
 アデルジェスは思わず固まり、目を丸くして扉を見ることしかできなかった。

「あれ? 昼間っからいちゃついてうらやましいですね」

 突然の乱入者は悪びれもせずに言う。
 赤味がかった金髪に青色の瞳を持つ、十五、六歳くらいの少年だった。すっきりと整った顔立ちをしており、目が悪戯っぽく輝いている。食事の乗った盆を持つ手には四つの花が刻まれているのが見えた。

「……何できみが持ってくるんだい。きみ、確か四花だったよね。四花の仕事じゃないよ」

 ミゼアスはアデルジェスから身を離し、呆れたような声を出した。

「下っ端連中だと、この光景見て平然としていられる奴はなかなかいませんよ。ミゼアス兄さんが情人連れ込んでいちゃいちゃしているなんて、初めてですもん」

 笑いながら少年は盆を卓の上に置く。

「きみねぇ……」

「ま、それはさておき」

 何か言おうとしたミゼアスを遮り、少年はミゼアスの前に跪いて頭を垂れた。

「俺付きの見習いがご迷惑をおかけしたこと、お詫びいたします。申し訳ありませんでした。見習いの失態は、俺の失態。昨日のミゼアス兄さんの花代、俺がお支払いいたします」

 先ほどまでの様子とは一転して真面目な声で、少年は謝罪の言葉を述べた。
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