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32.催し物
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何か催し物があるかもしれないということで、二人は広場に来てみた。
すると賑やかな音楽が演奏されていて、曲芸を披露している一団がいた。少し歩き疲れたことだし、休憩がてら見物していくことにする。
ミゼアスが近くの店の従業員らしき人物に何か声をかけると、広場を見渡しやすい位置に日除けの傘付きの席が作られた。冷たい飲み物も運ばれてくる。
「ここの果実茶、おいしいよ」
平然と席に座り、ミゼアスは果実茶をすすめてくる。
周囲を見回しても似たような席はない。アデルジェスは特別待遇に落ち着かない気持ちだった。
おまけにひそひそと囁きが聞こえてくるのだ。
「あれ、ミゼアス?」
「一緒にいるのは誰?」
「客……じゃないのか?」
「あのミゼアスがこの時間に外で客と? ありえないだろう」
「きっと、大物なんじゃない? 有力貴族の御曹司とか、どこかの王族とか……」
アデルジェスはとてもいたたまれない気分だった。一介の兵士でございます、申し訳ありませんと謝罪したいくらいだった。
「噂好きの連中っていうのはどこにでもいるもんだね。気になるようだったら、移動しようか?」
アデルジェスが小さくなっているのに気づいたのだろう。ミゼアスが心配そうに声をかけてくる。
「いや……せっかく席まで作ってもらったんだし、大丈夫」
弱々しいながらもアデルジェスは微笑みを浮かべてみせる。
「そう? 無理しないで、移動したくなったら言ってね」
「うん」
アデルジェスは深呼吸をして心を落ち着ける。周囲からも悪意を向けられているわけではない。単純な好奇心だけだ。気にするほどのことではないと自らに言い聞かせる。
注目を浴びることに慣れていないアデルジェスには落ち着かない状況だったが、ミゼアスは平然としている。慣れているのだろう。
考えれば考えるほど、現状がよくわからなくなってくる。つい流されっぱなしになっているが、そもそもミゼアスは自分のどこが気に入ったのだろう。
周囲の態度や囁きからしても、この島におけるミゼアスの地位の高さがうかがえる。アデルジェスには何がどうなっているのかさっぱりわからなかった。
「ああ、ほらほら、道化師が手品を始めるよ」
声を弾ませてアデルジェスを促すミゼアス。
楽しそうな様子を見ると、現状がよくわからなくてもよいかという気になってくる。曲芸に夢中になる姿は可愛らしい。この姿を見ているためにも、やはりここから移動するわけにはいかなかった。
すると賑やかな音楽が演奏されていて、曲芸を披露している一団がいた。少し歩き疲れたことだし、休憩がてら見物していくことにする。
ミゼアスが近くの店の従業員らしき人物に何か声をかけると、広場を見渡しやすい位置に日除けの傘付きの席が作られた。冷たい飲み物も運ばれてくる。
「ここの果実茶、おいしいよ」
平然と席に座り、ミゼアスは果実茶をすすめてくる。
周囲を見回しても似たような席はない。アデルジェスは特別待遇に落ち着かない気持ちだった。
おまけにひそひそと囁きが聞こえてくるのだ。
「あれ、ミゼアス?」
「一緒にいるのは誰?」
「客……じゃないのか?」
「あのミゼアスがこの時間に外で客と? ありえないだろう」
「きっと、大物なんじゃない? 有力貴族の御曹司とか、どこかの王族とか……」
アデルジェスはとてもいたたまれない気分だった。一介の兵士でございます、申し訳ありませんと謝罪したいくらいだった。
「噂好きの連中っていうのはどこにでもいるもんだね。気になるようだったら、移動しようか?」
アデルジェスが小さくなっているのに気づいたのだろう。ミゼアスが心配そうに声をかけてくる。
「いや……せっかく席まで作ってもらったんだし、大丈夫」
弱々しいながらもアデルジェスは微笑みを浮かべてみせる。
「そう? 無理しないで、移動したくなったら言ってね」
「うん」
アデルジェスは深呼吸をして心を落ち着ける。周囲からも悪意を向けられているわけではない。単純な好奇心だけだ。気にするほどのことではないと自らに言い聞かせる。
注目を浴びることに慣れていないアデルジェスには落ち着かない状況だったが、ミゼアスは平然としている。慣れているのだろう。
考えれば考えるほど、現状がよくわからなくなってくる。つい流されっぱなしになっているが、そもそもミゼアスは自分のどこが気に入ったのだろう。
周囲の態度や囁きからしても、この島におけるミゼアスの地位の高さがうかがえる。アデルジェスには何がどうなっているのかさっぱりわからなかった。
「ああ、ほらほら、道化師が手品を始めるよ」
声を弾ませてアデルジェスを促すミゼアス。
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