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24.裏の顔

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「ごめん……どうも自分が学校に通っていた頃の感覚で……」

「……まあ、こことよそじゃあ感覚が違うのかもしれないけどね。ここの学校は原則十二歳で卒業だしね。よそだと年齢制限がなかったりもするんだろう?」

「俺の行っていたところでは大人も通っていたりしたよ。卒業年齢も決まっていなかったと思う。何で十二歳って決まっているの?」

 アデルジェスの住んでいた町では、神殿が学校だった。読み書き、算術、礼儀作法といった基本的なことを教わったものだ。
 小さな町や村では学校がないところもある。そういったところから引っ越してきた大人たちの中には、学校に通う者もいた。
 よほど優秀なら上位の学校への紹介もあったが、アデルジェスには関係がなかった。一通り身に着いたら卒業という曖昧なもので、年齢制限などは大抵の町で存在しない。

「そりゃあ、客を取り始めるのが十二歳くらいからだからさ」

 こともなげに言われた言葉にアデルジェスは愕然とする。十二歳といえばまだ子供だろうに、それくらいから客を取るのか。

「それまでに最低でも基礎課程は終えておかないといけない。より上級の課程を終えているほど有利だけれどね。昇格の基準になるから。上級課程は卒業後でも希望すれば学べるけれど、費用は自己負担になってしまうんだ。まあ実際は卒業後でも上級課程のために、結構通うことになるけれど」

「それって、もし基礎課程とやらを終えられなかったら……?」

 もしアデルジェスだったら、終えられたか疑問だ。

「落第。特別な理由でもなければ、終わり。十二歳になる前でも能力不足と判断されたり著しくやる気がないと見なされたりすると、それも落第。落第すると放出または裏の店に回される。表での格付けは一花から五花まであるけれど、これは卒業者。落第者はその格付けには入らないで、『枯葉』と呼ばれる」

 淡々としたミゼアスの説明に、思わず背筋がぞっとした。
 そういえば初日に案内所で裏の店に関して恐ろしいことを聞いたような気がする。

「その裏の店っていうのは……」

 おそるおそる尋ねると、ミゼアスはいったん口を開きかけたものの、思い直したように首を振った。

「……もう上がるよ。このままだとのぼせちゃいそうだ」

 質問には答えず、ミゼアスはそれだけを言って湯から上がる。

「きみも適当に上がって。服を着たら外に何か食べに行こう」

 ミゼアスはこう言い残して、浴室から出て行った。
 残されたアデルジェスは湯に浸かったまま、しばし物思いに沈んだ。
 やはりここはただ綺麗なだけの場所ではないようだった。
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