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22.朝風呂

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 日が差し込んでいる。
 早朝の頼りない光ではなく、大分しっかりとした強さの日差しに思えた。
 アデルジェスはまた寝過ごしたかと思いながら、身をよじる。

「ん……」

 隣で微かな呻き声がした。
 見れば柔らかに波打つ金色の髪が寝台に広がっている。その持ち主の少年は両目を閉じ、いとけない寝顔をさらしていた。
 昨晩の記憶がよみがえり、アデルジェスは顔に血をのぼらせる。
 このあどけなさの残る少年の小さく華奢な身体を散々に貪ったのだ。もっとも主導権を握っていたのは相手だったが。

 アデルジェスの通行手形は七日間のものだ。今日で三日目。それならばこの部屋に滞在していればいいとミゼアスに言われた。
 通行手形で買えるのは二花までだ。それよりももっといい思いをさせてあげると淫靡な笑みを浮かべたミゼアスに言われ、アデルジェスは逆らえなかった。
 そしてその言葉どおり、アデルジェスはさらなる快楽を教えられたのだ。砂糖菓子よりも甘いミゼアスの身体に溺れた。

 夜の姿など嘘のように無垢さすら感じさせる寝顔を眺めていると、ややあってゆっくりと目が開いた。

「ん……? ああ……おはよう……」

 目を擦りながら、眠たそうに口を開く。それからのろのろと身を起こして、窓に目を向ける。

「んん……昼ちょっと前くらい……かな。起きるか……」

 そう言いながら、ミゼアスは寝台の上であぐらをかいた姿勢のまま俯いている。動く気はなさそうだ。
 一糸纏わぬ姿なのだが、色気も何もない。

「……お風呂入りたい……運んで……」

 ぼそっとミゼアスは呟く。

「お風呂?」

「昨日行ったからわかるだろう? ほら、そこの扉の先」

 俯いたまま、腕だけを扉の方向に向ける。
 朝は弱いようだ。軽くため息をつき、アデルジェスはミゼアスを横抱きにして扉へと向かった。両者とも裸なのだが、色めいたことが何も感じられない。

 そういえば湯は用意されているのだろうかと疑問を抱いたが、浴室では壁から生えた陶器の魚の口より浴槽へと湯が懇々と注がれていた。浴槽からは湯が常に溢れている。
 昨日もこの浴室には来たはずだったのだが、よく覚えていない。
 だが何にせよ、湯は常に使えるようだった。
 ミゼアスを降ろすと、彼は棚に置いてあった髪留めで髪をまとめてから自分に湯をかけ始める。何度か湯をかけた後、浴槽に入ると肩まで沈んで動かなくなった。目は閉じた状態で、寝ているようにも見える。

「……大丈夫?」

 そのまま溺れはしないだろうかとアデルジェスは不安になり、声をかけてみた。

「大丈夫」

 目を閉じたまま、答えを返すミゼアス。

「きみも入ったら?」

 うっすらと目を開けてアデルジェスに声をかけてくる。
 アデルジェスもミゼアスを真似て自分に湯をかけた後、浴槽に入る。二人で入ってもまだ余裕がある広さだ。
 アデルジェスがいた兵舎ではこんな贅沢な設備などなかった。いちおう浴場はあったが、湯の準備が面倒だといって夏は川で水浴びをしてすませていたものだ。
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