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02.ミゼアス
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「ミゼアスだ」
乗客の一人が、船着き場にいる少年を見て呟く。
「ミゼアス?」
おそらくは少年の名前だろう。思わず口にすると、呟いた乗客がアデルジェスを見て首を傾げる。
「もしかして、初めてかい?」
気さくな様子で声をかけてきた乗客に、アデルジェスは頷く。
恰幅の良い、商人風の男性だ。
「そうか。あのミゼアスは、五花にして白花の第一位……つまり最高男娼だよ。いくら金を積んでも、お気に召さなかったら口すらきいてもらえないような高嶺の花さ」
最高男娼と聞いて、アデルジェスは納得する。あの禍々しいとすら感じる美しさは、普通の少年のものではない。
「この島の花たちは、普通の男娼や娼婦ではない。優れた美貌を持ち、知性と教養を兼ねそろえた存在なんだ。特に頂点の五花なんて選び抜かれた珠玉の存在で、この国で最も教養が必要とされるのは不夜島の五花といわれるほどさ」
商人風の男性は説明を続ける。
どうやらミゼアスという少年は、アデルジェスのような凡人がお目にかかることすらできないような存在であるらしい。
しかし、何故こんな船着場に立っているのだろうか。アデルジェスは首を傾げる。
わき上がった疑問はすぐに解消されることになった。
乗客の中から見事な純白の髪を持つ老人が船を降りていくと、ミゼアスが優雅に歩み寄り、艶然と微笑んだのだ。
「ごきげんよう、ウインシェルド侯爵。お渡りになるとの知らせを聞き、待ちきれずに来てしまいました」
少年らしくやや高めの澄んだ声には、糖蜜を底に沈ませたような甘さすら感じさせる響きがあった。
「そうか、そうか。可愛い奴じゃの」
老人は上機嫌でミゼアスを寄り添わせ、意外としっかりした足取りで歩んでいく。
周囲は羨望の眼差しで見送る者が多い中、アデルジェスは胸中に不安じみた疑問がわき上がってくるのを感じていた。
あの老人はかなりの年齢に見えた。すでに枯れていて当然と思えるほどだ。それなのにあの毒花のような少年を侍らせるのか。
精根尽き果てて倒れないのだろうか。
それともあのような老人すら元気にさせてしまうような何かがあるのだろうか。
ついついアデルジェスは二人が寝台の上でどういったことをするのだろうと想像してしまい、一人で顔を赤くして俯いた。
乗客の一人が、船着き場にいる少年を見て呟く。
「ミゼアス?」
おそらくは少年の名前だろう。思わず口にすると、呟いた乗客がアデルジェスを見て首を傾げる。
「もしかして、初めてかい?」
気さくな様子で声をかけてきた乗客に、アデルジェスは頷く。
恰幅の良い、商人風の男性だ。
「そうか。あのミゼアスは、五花にして白花の第一位……つまり最高男娼だよ。いくら金を積んでも、お気に召さなかったら口すらきいてもらえないような高嶺の花さ」
最高男娼と聞いて、アデルジェスは納得する。あの禍々しいとすら感じる美しさは、普通の少年のものではない。
「この島の花たちは、普通の男娼や娼婦ではない。優れた美貌を持ち、知性と教養を兼ねそろえた存在なんだ。特に頂点の五花なんて選び抜かれた珠玉の存在で、この国で最も教養が必要とされるのは不夜島の五花といわれるほどさ」
商人風の男性は説明を続ける。
どうやらミゼアスという少年は、アデルジェスのような凡人がお目にかかることすらできないような存在であるらしい。
しかし、何故こんな船着場に立っているのだろうか。アデルジェスは首を傾げる。
わき上がった疑問はすぐに解消されることになった。
乗客の中から見事な純白の髪を持つ老人が船を降りていくと、ミゼアスが優雅に歩み寄り、艶然と微笑んだのだ。
「ごきげんよう、ウインシェルド侯爵。お渡りになるとの知らせを聞き、待ちきれずに来てしまいました」
少年らしくやや高めの澄んだ声には、糖蜜を底に沈ませたような甘さすら感じさせる響きがあった。
「そうか、そうか。可愛い奴じゃの」
老人は上機嫌でミゼアスを寄り添わせ、意外としっかりした足取りで歩んでいく。
周囲は羨望の眼差しで見送る者が多い中、アデルジェスは胸中に不安じみた疑問がわき上がってくるのを感じていた。
あの老人はかなりの年齢に見えた。すでに枯れていて当然と思えるほどだ。それなのにあの毒花のような少年を侍らせるのか。
精根尽き果てて倒れないのだろうか。
それともあのような老人すら元気にさせてしまうような何かがあるのだろうか。
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