きみを待つ

四葉 翠花

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33.夜の始まり

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「あっ……」

 胸の尖りを指で押しつぶされ、ミゼアスは軽く身をのけぞらせる。何度もそこを指先でかすめられ、さらにつまみ上げて転がされる。

「やっ……あぁ……ん……」

 切なげに身をくねらせ、ミゼアスは甘い声をあげた。優しく、甘美な快楽に頭が霞んでくる。
 片方は手で弄んだまま、もう片方の尖りに男は口づける。唇に含み、舌先で転がされるとミゼアスの口からは甘い声が漏れ続けた。

「はぁ……あっ……あぁ……」

 ときおり甘噛みされ、ミゼアスの身体に甘い痺れが走る。媚薬の効果もあって、快楽が身体中をうねり、呑みこんでいく。
 これだけで達してしまうのではないかというくらいだ。

「……ひっ!」

 しかし突然弾けた痛みに、ミゼアスは目を見開いて鋭い悲鳴を漏らす。優しく弄られて敏感になっていた胸の尖りを、強めに噛まれたのだ。

「おや、強い刺激は嫌いか。中にはこれで達する子もいるのだがな」

 男はミゼアスの胸から口を離し、小さく笑いながら呟く。

「嫌だったら、やめるが? 私としてはもっと可愛がってやりたいが、おまえが嫌ならば無理強いはしない。どうする?」

 からかうように胸の尖りを指先で転がしながら、男が尋ねてくる。

「い……いえ……続けてください……もっと、僕のことを可愛がってください……」

 指先で弄ばれるたび、噛まれたばかりのそこはじんじんと痛んだ。それでもミゼアスは続けてほしいと答える。

「そうか? そう言われては仕方がないな。もう片方も、同じように可愛がってやろう」

 にやにやとした笑いを滲ませると、男は先ほどとは逆の尖りを口で弄び始めた。もう片方は指で刺激する。
 甘い感覚がミゼアスを満たしていく。噛まれた側はまだ痛みが残っていたが、時間が経つほどにその疼痛も甘い痺れとなっていった。

「……っ!」

 それでも、強く噛まれれば甘い疼きは霧散してしまう。感じるのは、痛みだけだ。ミゼアスには、痛みを快楽に変換することはできない。

「やはり、つらいのではないか? やめようか?」

 いっそ心配そうな表情を浮かべ、男は優しげに問いかけてくる。

「やめないでください……続けてください、お願いします……」

 痛みで目に涙を浮かべながらも、ミゼアスは続けてほしいと懇願した。
 ここで『やめてください』などという反応を男は求めてはいない。男が望んでいるのは、健気に耐えるいじらしくも哀れな姿なのだ。

「まあ、おまえが続けてほしいというのなら仕方がないな……」

 わざとらしい言葉を発する男。まだまだ、夜は始まったばかりだった。
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本編『不夜島の少年
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