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ヴァレンの印象 2
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「あの客の、何言っているんだこいつっていうような、信じられないっていう顔。俺が床入りを持ちかけるのって、そんなにおかしいのかい」
「ヴァレン兄さんは、賭博や酒、そして診察目当てのお客が多いですからね。ミゼアス兄さんに花月琴目当ての客が多くて、そんなに床入りしなかったのと似たようなものじゃないですかね。ヴァレン兄さんの持ち味みたいなものだと思いますよ」
今は島を出たミゼアスから受け継いだ私室で、ぶつぶつとヴァレンが文句を吐き出すと、落ち着いた態度でアルンが答えた。
ヴァレンはその言葉を飲み込みながらゆっくりと息をついて、少しだけ気分を落ちつかせる。
「……もっとも、ミゼアス兄さんが床入りを持ちかけたら、断る客はいなかったと思いますけれどね」
気を抜いたところを見計らったかのように、アルンが棘を突き刺してくる。
ヴァレンは引きつりそうになる表情を動かさないことに腐心し、深呼吸を繰り返す。
「……アルン君、きみはやっぱり俺に恨みでもあるんじゃないのかい? 俺のこと、嫌いだろ?」
「いいえ、とんでもない。ミゼアス兄さんが島を出た際に僕たちを拾い上げてくださったことには感謝していますし、現在この店の稼ぎ頭として君臨していることを尊敬しています。床入りだけが白花の価値ではないと、たいへん参考になっています」
真面目な顔で、アルンはしっかりとヴァレンの目を見て言い切る。
そこに嘘偽りは見当たらなかったが、ヴァレンは身体から力が抜けていくようだった。
「……いや、何ていうか……もういいや……」
「ヴァレン兄さんは、賭博や酒、そして診察目当てのお客が多いですからね。ミゼアス兄さんに花月琴目当ての客が多くて、そんなに床入りしなかったのと似たようなものじゃないですかね。ヴァレン兄さんの持ち味みたいなものだと思いますよ」
今は島を出たミゼアスから受け継いだ私室で、ぶつぶつとヴァレンが文句を吐き出すと、落ち着いた態度でアルンが答えた。
ヴァレンはその言葉を飲み込みながらゆっくりと息をついて、少しだけ気分を落ちつかせる。
「……もっとも、ミゼアス兄さんが床入りを持ちかけたら、断る客はいなかったと思いますけれどね」
気を抜いたところを見計らったかのように、アルンが棘を突き刺してくる。
ヴァレンは引きつりそうになる表情を動かさないことに腐心し、深呼吸を繰り返す。
「……アルン君、きみはやっぱり俺に恨みでもあるんじゃないのかい? 俺のこと、嫌いだろ?」
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