不夜島の少年 小話集

四葉 翠花

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ヴァレンの印象 1

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 ヴァレンは客の相手をしていた。
 今回で三回目になる客で、賭け事好きの貴族の青年だ。
 本気で勝負しろとのことだったので、お望みどおり完膚なきまでに叩きのめしてさしあげたところ、火がついたらしい。今日も新品のカードを手にやってきたのだ。
 そして、青年から五つ目の宝石を巻き上げたところで、ヴァレンは一息ついた。

「そろそろ休憩にしましょうか。ああ、せっかくだから今日あたり床入りしておきます?」

「……は?」

 軽い調子でヴァレンが尋ねると、青年は呆気に取られたようにぽかんと口を開け、わずかに顔をしかめながらヴァレンを見つめてくる。
 何かおかしなことを言っただろうかとヴァレンが訝しく思いながら青年を見返すと、ややあって青年は軽く息を吐いて首を左右に振った。

「……まさか、おまえがそのようなことを言うとは思わず、驚いた」

「いや、俺、いちおう白花なんですけれど」

「そうだったな。よく見れば、おまえは顔立ちも整っていて美少年といえるのだな。だが、悪いがおまえ相手にそのような気にはなれない」

 あっさりと振られてしまい、今度はヴァレンが呆然となる番だった。
 白花を買っておいて、その気になれないとはどういうことだろうか。
 これが付き合いで連れてこられたが、実は白花には興味がないといったような事情があるならば、わかる。しかし、この青年はわざわざヴァレンを指名して、今日で三回も通ってきているのだ。
 このような扱いを受ける花など、不夜島に数多くいる花たちのなかでも、ヴァレンだけではないだろうか。

 ヴァレンは釈然としない気持ちを抱えたまま、賭け事を再開した。
 つい、借金を返済したときのような全力の本気を出してしまい、もはや悲鳴すらあげられないほど青年を追い詰めてしまったのは、悪気があったわけではない。
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