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ヴァレンの目標 4
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「えっと……きみ、何か不安に思うようなことって、あるかい?」
海岸にてナマコたちを無事に帰した後、ふと思いついてミゼアスは尋ねてみた。
なるべくならば暗い情念など抱かせたくはなかったが、花月琴の音のために、ある程度は必要なことである。
ヴァレンが苦手とすることや、不安を抱く要素がわかれば、少しは手助けになるかと思われたのだ。
もっとも、お気楽に生きているヴァレンはあっさり『ない』と答えて終わるのだろうと、尋ねた本人であるミゼアスもさほど期待はしてなかった。
「はい……」
ところが、ミゼアスの予想に反して、ヴァレンは表情を曇らせて俯いたのだ。
「……え? それは何だい?」
俯くヴァレンを見て、ミゼアスはまさか不安に思うことがあったのかと驚く。同時に見抜けなかったことに罪悪感と不安を覚え、脈打つ胸をぐっと押さえてヴァレンの答えを待つ。
「実は……毎日、柔軟体操をしているんですけど、なかなか自分のアレを咥えられるところまでいかなくて……」
ぼそぼそと語るヴァレンの言葉を聞きながら、心配した自分がバカだったとミゼアスは頭を抱える。
以前、白花の仕事では客のものを咥えることがあるという話をしたとき、ヴァレンは自分のものを咥えるのだと勘違いしたのだ。
すぐに誤解は解いたものの、何故かヴァレンの中ではそれが目標として掲げられてしまったらしい。
「あのね……それは、できなくてもいいんだよ。というか、それをできるようになって、何をするつもりなんだい?」
「できるようになりたいんです」
「いや、だから……何のために?」
「できるようになりたいんです」
きっぱりとした口調で断言するヴァレン。瞳には強い決意が宿っている。
ミゼアスはその瞳を見返したが、ややあって目を閉じて深く息を吐いた。
「……うん、わかったよ……頑張ってね……」
ヴァレンの情操教育は、ミゼアスの意図したものとは別方向に向かっているらしい。
何かがおかしいと思いながらも、このまま当人の思うように突っ走らせてみるしかないと、ミゼアスは諦めの心境で答えるのだった。
海岸にてナマコたちを無事に帰した後、ふと思いついてミゼアスは尋ねてみた。
なるべくならば暗い情念など抱かせたくはなかったが、花月琴の音のために、ある程度は必要なことである。
ヴァレンが苦手とすることや、不安を抱く要素がわかれば、少しは手助けになるかと思われたのだ。
もっとも、お気楽に生きているヴァレンはあっさり『ない』と答えて終わるのだろうと、尋ねた本人であるミゼアスもさほど期待はしてなかった。
「はい……」
ところが、ミゼアスの予想に反して、ヴァレンは表情を曇らせて俯いたのだ。
「……え? それは何だい?」
俯くヴァレンを見て、ミゼアスはまさか不安に思うことがあったのかと驚く。同時に見抜けなかったことに罪悪感と不安を覚え、脈打つ胸をぐっと押さえてヴァレンの答えを待つ。
「実は……毎日、柔軟体操をしているんですけど、なかなか自分のアレを咥えられるところまでいかなくて……」
ぼそぼそと語るヴァレンの言葉を聞きながら、心配した自分がバカだったとミゼアスは頭を抱える。
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すぐに誤解は解いたものの、何故かヴァレンの中ではそれが目標として掲げられてしまったらしい。
「あのね……それは、できなくてもいいんだよ。というか、それをできるようになって、何をするつもりなんだい?」
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「いや、だから……何のために?」
「できるようになりたいんです」
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ミゼアスはその瞳を見返したが、ややあって目を閉じて深く息を吐いた。
「……うん、わかったよ……頑張ってね……」
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