不夜島の少年 小話集

有効生物ヴァレン ４

　泣いていたヴァレンを見つけた日からしばらく過ぎ、ミゼアスはとんでもない話を聞いた。
　ヴァレンが、まずいので病気ではないかと言った客が、本当に病気だったそうだ。

　客はヴァレンに病気を心配され、その場では笑い飛ばしたものの、帰ってから念のために医者を呼んだのだという。すると、ある病気が発見されたのだ。
　早めに適切な治療をすれば簡単に治るのだが、自覚症状が出てからでは手遅れになっていることも多いという病気だそうだ。
　幸いにも、発見が早かったためにあっさり治ったという。普通はそれほど早くに発見するのは困難らしい。
　ヴァレンのおかげだと、客はたいそう感謝しているとのことだった。

　思い起こせば、ヴァレンは薬の入った食べ物を感知することができた。同様に、客の体液から何かを感じ取っていたのかもしれない。
　ヴァレンは本当に不思議な生き物だ。

「この焼き菓子、美味しいですー！」

　にこにこと焼き菓子を満喫するヴァレンを見て、ミゼアスは口元に微笑を浮かべた。
　病気が治ったと喜んだ客から様々な贈り物をもらい、その中のひとつである菓子を持ってミゼアスのところにやってきたのだ。
　一緒に食べようと言うヴァレンを見て、ミゼアスは胸が温かくなった。まだまだ子供らしさが抜けないと、くすぐったくもなる。
　ヴァレンの働きによって得た菓子を、ミゼアスもありがたく口に運んだ。

　今回の件により、ヴァレンは病気の早期発見に有効だという噂が、口づてに広がっていった。
　予約はどんどん埋まっていき、ヴァレンは人気白花への道を歩み始めたのだった。