不夜島の少年 小話集

四葉 翠花

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ヴァレンの一日~昼~

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「相変わらず、きみの部屋は個性的だね。どうして生臭いんだろうね」

 ヴァレンの部屋を訪れたミゼアスは、窓際に吊るされた魚を見て、疲れたような吐息を漏らした。
 ミゼアスはヴァレンが見習いだった頃の上役で、白花の第一位である。自由奔放、身勝手などいわれているが、実際は真面目でお堅い性格だ。

「ああ、残念ながらまだ干し魚は出来上がっていないんですよ。貝の干物ならありますけれど、食べますか?」

「……いつからきみは干物愛好家になったんだい」

「いやー、最近干物作りに目覚めて。朝市に行っているんですけれど、美味しい物がたくさんありますよ。干物には干物の美味しさがありますけれど、やっぱりとれたての魚は格別ですよ。ミゼアス兄さんも一緒に行きますか?」

「……朝市の時間なんて、僕は寝ているよ。そんな時間に起きて活動している白花は、きみくらいのものだよ」

「早起きは銅貨一枚の得っていうじゃないですか」

「僕は金貨を払っても、寝ていたいね」

「まあ、ミゼアス兄さんは身体のこともあるし、寝ていたほうがいいかもしれませんね。それより、何かご用でしょうか?」

「ああ……ちょっと調べ物をしているんだけれど、資料室に行って探すより、きみに聞いたほうが早いと思って。時間、大丈夫かい?」

「ええ、構いませんよ。何か用意するんで、どうぞ座っていてください」

 ヴァレンはミゼアスを部屋の中に招き入れ、支度を始める。
 怒らせたら怖いミゼアスだが、普段は優しい兄のような存在だ。昔からヴァレンのことを可愛がってくれ、ミゼアスがいなければ今のヴァレンはなかった。
 ミゼアスが自分を頼ってくれるというのは、とても嬉しいことだ。

「火酒……はこの時間からだときついですかねー。果実酒のほうがいいですか?」

「……お茶がいい」

「えー、干物には酒のほうが合うのに」

「いいから、お茶。こんな真昼間から酒なんて飲むものじゃないよ」

「……はーい」

 やはりミゼアスはお堅い。仕方なく、ヴァレンはお茶の準備を始めた。
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