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いたずら 6
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「ヴァレン……! その、昨日はごめん……本当に悪かったよ……どうか許してほしい……」
希望に心を震わせながら、ネヴィルは必死に謝る。するとヴァレンは笑って首を振った。
「大丈夫だよ、怒っていないよ。安心して。押さえ切れなかっただけだよね」
ヴァレンの言葉にネヴィルは涙すらこみあげてくる。何とおおらかで、優しいのだろう。到底かなわないとネヴィルは安らかな敗北感を覚えていた。
「だからね、これ、あげる」
そう言ってヴァレンはネヴィルに箱を差し出す。手のひらよりやや大きい程度の箱だ。ネヴィルは素直に受け取った。
「開けてもいい?」
何だろうとわくわくしながらネヴィルが尋ねると、ヴァレンはにっこりと頷いた。期待に胸を膨らませながら、ネヴィルは箱を開けてみる。
よくわからない黒い物体がいた。丸くて長く、いぼいぼした体をうぞうぞと動かしている。
「……これ、なに……?」
引きつった笑いが浮かび上がってくるのを感じながら、ネヴィルは呟く。
「ナマコ」
あっさりとヴァレンは答える。
「……ナマコ? 何で……」
「だって、柔らかくて食べられるものがほしいんだよね? このナマコ、凄いんだよ! まず普通に触ると、滑らかで気持ちいいんだ。これで手触りを楽しめるよね」
ヴァレンは曇りのない笑顔を浮かべて語り出す。
「それで、触っているうちにだんだん硬くなっていくんだ。でも、その後柔らかくなっていくよ。あ、何か変なものを吐き出すから気をつけてね」
「それ……何か、別の……いやらしい系統のものについて言っているような気がする……」
ぼそっとネヴィルは呟くが、ヴァレンは気にせず続ける。
「最後にはどろどろに溶けちゃうけれど、放っておいたら再生するから大丈夫。で、一通り楽しんだら食べられるんだ。これでネヴィルも心が癒されるよね!」
朗らかな宣言に、ネヴィルは何も言うことができなかった。言葉が出てこない。
「俺を食べようとするなんて、ネヴィルはお腹が空いているだけじゃなくて、疲れているんだと思う。ミゼアス兄さんに言っても、やっぱりネヴィルは疲れているだろうから助けになってやれって言われたよ。このナマコの準備もしてくれたんだ。俺にできることがあったら、助けになるから」
「ミゼアス兄さん……」
黒い笑みを浮かべるミゼアスが浮かんでくるようだった。まさかミゼアスが気付かないはずはないだろう。絶対に、面白がっている。
これが、罰か。
「……気に入らなかった?」
黙って俯くネヴィルに、ヴァレンは不安げな声で尋ねてくる。
「あ……い、いや、気持ちは嬉しいよ。ありがとう。……どうしてナマコか、よくわからないけれど……」
後半はぼそぼそと呟くと、ヴァレンは安心したように笑いかけてきた。
その笑顔を見ると、まあいいかという気になってくる。ネヴィルのことを怒っておらず、気にかけてくれているのだ。幸せなことだろう。
さて、とりあえずこのナマコをどうしようか――
ナマコはネヴィルの気など知らず、ただうぞうぞと動いていた。
希望に心を震わせながら、ネヴィルは必死に謝る。するとヴァレンは笑って首を振った。
「大丈夫だよ、怒っていないよ。安心して。押さえ切れなかっただけだよね」
ヴァレンの言葉にネヴィルは涙すらこみあげてくる。何とおおらかで、優しいのだろう。到底かなわないとネヴィルは安らかな敗北感を覚えていた。
「だからね、これ、あげる」
そう言ってヴァレンはネヴィルに箱を差し出す。手のひらよりやや大きい程度の箱だ。ネヴィルは素直に受け取った。
「開けてもいい?」
何だろうとわくわくしながらネヴィルが尋ねると、ヴァレンはにっこりと頷いた。期待に胸を膨らませながら、ネヴィルは箱を開けてみる。
よくわからない黒い物体がいた。丸くて長く、いぼいぼした体をうぞうぞと動かしている。
「……これ、なに……?」
引きつった笑いが浮かび上がってくるのを感じながら、ネヴィルは呟く。
「ナマコ」
あっさりとヴァレンは答える。
「……ナマコ? 何で……」
「だって、柔らかくて食べられるものがほしいんだよね? このナマコ、凄いんだよ! まず普通に触ると、滑らかで気持ちいいんだ。これで手触りを楽しめるよね」
ヴァレンは曇りのない笑顔を浮かべて語り出す。
「それで、触っているうちにだんだん硬くなっていくんだ。でも、その後柔らかくなっていくよ。あ、何か変なものを吐き出すから気をつけてね」
「それ……何か、別の……いやらしい系統のものについて言っているような気がする……」
ぼそっとネヴィルは呟くが、ヴァレンは気にせず続ける。
「最後にはどろどろに溶けちゃうけれど、放っておいたら再生するから大丈夫。で、一通り楽しんだら食べられるんだ。これでネヴィルも心が癒されるよね!」
朗らかな宣言に、ネヴィルは何も言うことができなかった。言葉が出てこない。
「俺を食べようとするなんて、ネヴィルはお腹が空いているだけじゃなくて、疲れているんだと思う。ミゼアス兄さんに言っても、やっぱりネヴィルは疲れているだろうから助けになってやれって言われたよ。このナマコの準備もしてくれたんだ。俺にできることがあったら、助けになるから」
「ミゼアス兄さん……」
黒い笑みを浮かべるミゼアスが浮かんでくるようだった。まさかミゼアスが気付かないはずはないだろう。絶対に、面白がっている。
これが、罰か。
「……気に入らなかった?」
黙って俯くネヴィルに、ヴァレンは不安げな声で尋ねてくる。
「あ……い、いや、気持ちは嬉しいよ。ありがとう。……どうしてナマコか、よくわからないけれど……」
後半はぼそぼそと呟くと、ヴァレンは安心したように笑いかけてきた。
その笑顔を見ると、まあいいかという気になってくる。ネヴィルのことを怒っておらず、気にかけてくれているのだ。幸せなことだろう。
さて、とりあえずこのナマコをどうしようか――
ナマコはネヴィルの気など知らず、ただうぞうぞと動いていた。
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