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いたずら 2
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館内の共同浴場で、ヴァレンとネヴィルは湯に浸かっていた。
上級の白花は自分専用の浴室を持っているが、そうでない者たちは共同浴場を使う。この島では温かい地下水がふんだんに湧き出しているので、広い浴槽には常に綺麗な湯がたたえられている。
「前はお風呂って別に好きじゃなかったんだけれど、だんだん気持ちいいなーって思うようになってきたなあ」
ぼそっとヴァレンが漏らすと、ネヴィルは軽く笑う。
「それは、だんだん涼しくなってきたせいもあるかもしれないね。冬になると、もっと気持ちよく感じるよ」
「へえー、そっか。ネヴィルは一年以上ここにいるんだっけ?」
「うん。とりあえず、一通りの季節は経験済み」
「ふーん、確かネヴィルのほうが年上なんだよね」
「そうだね。僕のほうがヴァレンより一歳上になるのかな。……成績は僕のほうが下だけれど」
「むー」
自嘲気味なネヴィルの言葉に、ヴァレンはやや不満げな声を漏らす。
「ああ……ごめん。あまり卑下しないようにって気をつけているんだけれど……」
「ネヴィルは頑張っているよ。前のように、意地悪しなくなったもん。みんな、ネヴィルは変わってきたって言っているよ」
「うん……ありがとう」
照れくさそうに笑いながら、ネヴィルは呟く。
「それに俺は花月琴が致命的に駄目だから、そこで止まっちゃっている。ミゼアス兄さんがいろいろ教えてくれるから、前よりはましになってきたけれど……。ネヴィルのほうが総合では進んでいるよ」
「ああ……花月琴か。でも、ミゼアス兄さんは当代一の名手だし、ヴァレンだって器用なんだから、だんだん良くなっていくんじゃないかな。総合……か……」
そっと上を向いて何か考えていたネヴィルだったが、ややあって何かを思いついたらしく、ヴァレンを見据える。
「じゃあ、さ……ヴァレンって床入りの勉強は始めている?」
上級の白花は自分専用の浴室を持っているが、そうでない者たちは共同浴場を使う。この島では温かい地下水がふんだんに湧き出しているので、広い浴槽には常に綺麗な湯がたたえられている。
「前はお風呂って別に好きじゃなかったんだけれど、だんだん気持ちいいなーって思うようになってきたなあ」
ぼそっとヴァレンが漏らすと、ネヴィルは軽く笑う。
「それは、だんだん涼しくなってきたせいもあるかもしれないね。冬になると、もっと気持ちよく感じるよ」
「へえー、そっか。ネヴィルは一年以上ここにいるんだっけ?」
「うん。とりあえず、一通りの季節は経験済み」
「ふーん、確かネヴィルのほうが年上なんだよね」
「そうだね。僕のほうがヴァレンより一歳上になるのかな。……成績は僕のほうが下だけれど」
「むー」
自嘲気味なネヴィルの言葉に、ヴァレンはやや不満げな声を漏らす。
「ああ……ごめん。あまり卑下しないようにって気をつけているんだけれど……」
「ネヴィルは頑張っているよ。前のように、意地悪しなくなったもん。みんな、ネヴィルは変わってきたって言っているよ」
「うん……ありがとう」
照れくさそうに笑いながら、ネヴィルは呟く。
「それに俺は花月琴が致命的に駄目だから、そこで止まっちゃっている。ミゼアス兄さんがいろいろ教えてくれるから、前よりはましになってきたけれど……。ネヴィルのほうが総合では進んでいるよ」
「ああ……花月琴か。でも、ミゼアス兄さんは当代一の名手だし、ヴァレンだって器用なんだから、だんだん良くなっていくんじゃないかな。総合……か……」
そっと上を向いて何か考えていたネヴィルだったが、ややあって何かを思いついたらしく、ヴァレンを見据える。
「じゃあ、さ……ヴァレンって床入りの勉強は始めている?」
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