不夜島の少年 小話集

四葉 翠花

文字の大きさ
上 下
69 / 136

贈り物 3

しおりを挟む
 ヴァレンはミゼアスから古くなった衣類の切れ端をもらい、小袋を作るべく縫い物をしていた。
 器用に細かい縫い目を刻んでいくヴァレンに、ミゼアスは感嘆の吐息を漏らす。

「きみ、普段の行動は大ざっぱだけれど、細かい作業もこなすし、手先は器用だよね」

「できたー」

 あっという間に小袋が完成した。ヴァレンは軽く引っ張って、不具合がないかを確かめてみる。

「ねえ、ミゼアス兄さん。エアイールにもお守りをあげていいですか?」

 出来に問題がないことを確認すると、ヴァレンはミゼアスに問いかけた。

「エアイール? ああ、あの黒髪の子か。別に構わないよ」

 ミゼアスが許可すると、ヴァレンはにっこり笑って小袋をもうひとつ作り始める。
 その様子をミゼアスは微笑ましい思いで眺めていた。
 友達にもお守りを贈ろうというヴァレンの心遣いに、胸が温かくなる。一時期はいじめられているのではないかと心を痛めたものだったが、友達ともうまくやっているようだ。

 ふたつめの袋を作り終えたヴァレンは、ミゼアスからもらった髪の毛を中に詰めていく。紐で袋の口を縛って完成だ。

「あと、港に連れて行ってほしいです! ほんのちょっとでいいんで」

 さらなるヴァレンのお願いに、ミゼアスは首を傾げる。

「港で何をするんだい?」

「ヒトデをとってきます!」

「……はい?」

「この間、星型のものを誕生日に贈ると幸せになれるっていう話を読んだので! エアイールの誕生日にあげようと思って」

「はあ……」

 幸せになれる贈り物をしたいというヴァレンの心遣いは、とても微笑ましい。愛らしく、優しい贈り物だといえるだろう。
 しかし、そこで何故ヒトデを選ぶのだろうか。

「ええと……きみの心遣いは、とてもいいと思うよ。でも、ヒトデはちょっと……もらっても困るんじゃないかな……」

「えー、格好いいじゃないですか、ヒトデ。あの、裏側がうぞうぞ動くところとか!」

 ぐっと拳を握り締め、力説するヴァレン。

「……星型のものなら、僕が用意してあげるから、ヒトデはやめておきなさい……」
しおりを挟む
本編『不夜島の少年
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...