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夢は森の香り 2
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「申し訳ございませんでした」
ミゼアスが部屋に戻ると、床に平伏したヴァレンが待ち構えていた。額を床に擦りつけ、謝罪の言葉を述べる。
「……相変わらず、きみの勘の鋭さは常軌を逸しているね」
ゆっくりと息を吐き出し、ミゼアスは呟く。さてこれからお仕置きだというときに、自ら出頭して謝罪するとは絶妙すぎる。
「心を入れ替え、これからは礼節をわきまえた行動を心がけたいと思います」
「きみは心の入れ替わりがずいぶんと激しいよね。また部屋を出た途端に、入れ替わっちゃうんじゃないのかな」
「いえ、そんなことはありません。だから、お仕置きだけはお許しください。この間は、本当にやりすぎたと思っています。本当です」
「……うん、逃げようとして、窓から飛び降りた奴は初めてだね。しかも三階から。一瞬、お仕置きよりも命を絶つほうを選んだのかと思ったよ」
談話室にて他の白花たちに出入り口を塞がせ、ヴァレンを追い詰めたのだ。
しかしヴァレンは開け放たれた窓へと向かって走っていったかと思うと、そこから飛び降りた。
そのことを思い出すと、ミゼアスは頭痛を覚える。
「あっはっは、まさか」
ヴァレンは笑って否定する。確かに彼が自ら命を絶つことなど、ありえないだろう。
「あわてて窓から下を見れば、きみが走っていくところだった。よく無事に着地できたよね。心配して損したよ。きみはどうして、白花なんてやっているんだい? 何かおかしいよね。ああ、それと窓には格子が必要かもね」
まさか三階から飛び降りるとは想定外だった。あのときは心臓が凍りつくような思いをしたものだ。
そこまで追い詰めてしまったのかと罪悪感に包まれながら地面を見下ろせば、元気に走っていくヴァレンの姿が見えた。通りを歩く人々からの歓声と拍手に応え、手を振っていた姿がミゼアスの脳裏に蘇る。
後から目撃者に聞けば、空中で回転して見事に着地したのだという。そして着地の衝撃を感じさせない軽やかな走りで、通りを駆けていったそうだ。
ヴァレンは年を経るごとに、わけのわからない芸が増えていく。彼はいったい何を目指しているのだろうか。ミゼアスは不思議で仕方がない。
ミゼアスが部屋に戻ると、床に平伏したヴァレンが待ち構えていた。額を床に擦りつけ、謝罪の言葉を述べる。
「……相変わらず、きみの勘の鋭さは常軌を逸しているね」
ゆっくりと息を吐き出し、ミゼアスは呟く。さてこれからお仕置きだというときに、自ら出頭して謝罪するとは絶妙すぎる。
「心を入れ替え、これからは礼節をわきまえた行動を心がけたいと思います」
「きみは心の入れ替わりがずいぶんと激しいよね。また部屋を出た途端に、入れ替わっちゃうんじゃないのかな」
「いえ、そんなことはありません。だから、お仕置きだけはお許しください。この間は、本当にやりすぎたと思っています。本当です」
「……うん、逃げようとして、窓から飛び降りた奴は初めてだね。しかも三階から。一瞬、お仕置きよりも命を絶つほうを選んだのかと思ったよ」
談話室にて他の白花たちに出入り口を塞がせ、ヴァレンを追い詰めたのだ。
しかしヴァレンは開け放たれた窓へと向かって走っていったかと思うと、そこから飛び降りた。
そのことを思い出すと、ミゼアスは頭痛を覚える。
「あっはっは、まさか」
ヴァレンは笑って否定する。確かに彼が自ら命を絶つことなど、ありえないだろう。
「あわてて窓から下を見れば、きみが走っていくところだった。よく無事に着地できたよね。心配して損したよ。きみはどうして、白花なんてやっているんだい? 何かおかしいよね。ああ、それと窓には格子が必要かもね」
まさか三階から飛び降りるとは想定外だった。あのときは心臓が凍りつくような思いをしたものだ。
そこまで追い詰めてしまったのかと罪悪感に包まれながら地面を見下ろせば、元気に走っていくヴァレンの姿が見えた。通りを歩く人々からの歓声と拍手に応え、手を振っていた姿がミゼアスの脳裏に蘇る。
後から目撃者に聞けば、空中で回転して見事に着地したのだという。そして着地の衝撃を感じさせない軽やかな走りで、通りを駆けていったそうだ。
ヴァレンは年を経るごとに、わけのわからない芸が増えていく。彼はいったい何を目指しているのだろうか。ミゼアスは不思議で仕方がない。
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