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夜の訪問者1
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マッサージをしている途中で、アデルジェスは安らかな寝息を立て始めた。
よほど疲れていたのだろう。
昼間に話を聞いた限りでは、この島にやってくるのも不本意だったようだ。慣れない場所で慣れない人たちに囲まれて緊張したことだろう。
ネリーはそっとアデルジェスに毛布をかけた。
無防備な寝顔を晒すアデルジェスを見て、ネリーはくすりと笑う。
アデルジェスのほうがネリーよりも年上だという話だったが、あまりそうは思えない。身体だけは大きな、おとなしい子犬を拾ってきたような気分だ。
さて、これからどうしようか。アデルジェスは寝ている。このままそっとしておけば、問題はないだろう。
考えをめぐらせていると、小さく扉を叩く音がした。
アデルジェスを起こさないよう静かに扉を開けると、見習いの女の子がいた。伝言を預かってきたのだという。
ネリーはその伝言に従い、館内の応接室へと向かった。ちょっとした話し合いに使われる小さな部屋だ。
するとそこで待っていたのは、黄金色の髪を結い上げて薄化粧をした、絶世の美少女だった。手にはレースの手袋をはめている。姿勢よく椅子に腰かける姿は、一輪の凛とした花のようだった。
「……ここに来るっていうことは、うまくいっていないのかい?」
美少女がそのたおやかな外見に見合わぬ、ふてぶてしい態度で口を開く。声も少女のものにしては少々低い。
「……ミゼアス……どうしてあなたがここに来るわけ……?」
ネリーは唖然と呟いた。
目の前にいる絶世の美少女は、本当は少女などではない。この島の白花第一位であるミゼアスだ。
「少々気になってね。それよりも、首尾はどうなんだい?」
つまらなさそうにミゼアスが言う。
「……今は部屋で寝ているわよ。マッサージしていたら、寝ちゃったわ」
「ふぅん、そう。しなかったのかい?」
「していないわ。何だか……この島に来るのも乗り気じゃなかったみたいだし……それに、相当奥手みたいね。予想では、きっと未経験よ」
「へえ、未経験」
ミゼアスが目を輝かせる。
「……何か、よからぬことを考えていないかしら?」
ネリーは呆れたような声を出す。
「ふふ、いいね。ぞくぞくしちゃうよ。初物か……」
しかしミゼアスはネリーの言葉など聞いていないようだ。舌なめずりせんばかりの表情で呟く。その姿は淫蕩な娼婦そのものに見えた。
よほど疲れていたのだろう。
昼間に話を聞いた限りでは、この島にやってくるのも不本意だったようだ。慣れない場所で慣れない人たちに囲まれて緊張したことだろう。
ネリーはそっとアデルジェスに毛布をかけた。
無防備な寝顔を晒すアデルジェスを見て、ネリーはくすりと笑う。
アデルジェスのほうがネリーよりも年上だという話だったが、あまりそうは思えない。身体だけは大きな、おとなしい子犬を拾ってきたような気分だ。
さて、これからどうしようか。アデルジェスは寝ている。このままそっとしておけば、問題はないだろう。
考えをめぐらせていると、小さく扉を叩く音がした。
アデルジェスを起こさないよう静かに扉を開けると、見習いの女の子がいた。伝言を預かってきたのだという。
ネリーはその伝言に従い、館内の応接室へと向かった。ちょっとした話し合いに使われる小さな部屋だ。
するとそこで待っていたのは、黄金色の髪を結い上げて薄化粧をした、絶世の美少女だった。手にはレースの手袋をはめている。姿勢よく椅子に腰かける姿は、一輪の凛とした花のようだった。
「……ここに来るっていうことは、うまくいっていないのかい?」
美少女がそのたおやかな外見に見合わぬ、ふてぶてしい態度で口を開く。声も少女のものにしては少々低い。
「……ミゼアス……どうしてあなたがここに来るわけ……?」
ネリーは唖然と呟いた。
目の前にいる絶世の美少女は、本当は少女などではない。この島の白花第一位であるミゼアスだ。
「少々気になってね。それよりも、首尾はどうなんだい?」
つまらなさそうにミゼアスが言う。
「……今は部屋で寝ているわよ。マッサージしていたら、寝ちゃったわ」
「ふぅん、そう。しなかったのかい?」
「していないわ。何だか……この島に来るのも乗り気じゃなかったみたいだし……それに、相当奥手みたいね。予想では、きっと未経験よ」
「へえ、未経験」
ミゼアスが目を輝かせる。
「……何か、よからぬことを考えていないかしら?」
ネリーは呆れたような声を出す。
「ふふ、いいね。ぞくぞくしちゃうよ。初物か……」
しかしミゼアスはネリーの言葉など聞いていないようだ。舌なめずりせんばかりの表情で呟く。その姿は淫蕩な娼婦そのものに見えた。
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