不夜島の少年 小話集

四葉 翠花

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恋とはどんなもの?2

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 コリンは孤児だったらしい。物心ついた頃にはすでに親はなく、老夫婦に育てられていた。
 裏通りにある、ろくに日も差さない小屋で毎日を過ごしていた。
 常に数人の子供たちが一緒にいたが、兄弟姉妹というわけでもなかったようだ。
 老夫婦には友達だという男がたくさんいて、その遊び相手をするのが子供たちの日課だった。

 実は老夫婦は孤児を引き取ってある程度仕込み、娼館に売ることを生業としていたと知ったのは、かなり後になってからである。
 本来はもっと格下の娼館を相手としているようだが、コリンは上玉と判断されて不夜島へと売られてきたらしい。

 このことを言うと、何故かみんな同情的になるのだ。先ほどの同級生たちだって、様子がおかしかった。
 コリンはわりと大切にされ、飢えたこともなかった。同級生たちの中には毎日食べるものもなく、ひもじい思いをしていた者も多いと聞く。それから比べれば、恵まれているほうだとコリンは思う。

 嫌なことといえば、男たちが白くてねばねばしたものをかけたり、飲ませたりしてくることくらいだった。
 それでも嫌な顔をせず、嬉しそうなふりをすれば男たちは喜んで、コリンにお菓子をくれることだってあったのだ。まだ我慢できた。

 今はあの白い液体が何だったのかも、男たちがさせていたことが何かもわかる。
 しかし、これから店に出て客を取るようになれば、同じようなことをするのだ。何故、みんなの態度が変わるのかがよくわからない。
 確かにそのときに教えられたやり方と、この島でのやり方は違う。

 それはミゼアスから教えられた。いきなり直接的な行為をするよりも、それ以前の駆け引きを客は楽しみたがるのだという。
 最初は色々と戸惑ったコリンだったが、今ではミゼアスにも褒めてもらえるほど、この島でのやり方は身についたはずだ。

 まだ今は勉強中で、実際に性交をしたことはない。島に来る前に遊び相手をしていたときも、手と口しか使ったことはなかった。
 みんなは店に出て客を取ることを恐れているようだ。性交が怖いらしい。しかしコリンは不安こそあったものの、むしろ興味のほうが強かった。

 ただ、性交は恋愛との結びつきが強いという。娼館とはいえ――むしろ、だからこそかもしれないが――擬似的な恋愛を楽しみたがる客は多い。真似事ではあっても、そういう気分に浸らせることが重要なのだと授業でも習った。
 コリンはその『恋』とはどういうものなのか、わからない。同級生たちの恋話にもよく耳を傾けるが、やはりわからない。
 まだまだコリンにはわからないことばかりだった。
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