不夜島の少年 小話集

四葉 翠花

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恋とはどんなもの?1

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「……それで、約束したんだ。いつか借金を返し終わって帰るまで、待っているって言ってくれた」

 放課後の学校にて、同級生が身の上を語るのをコリンたちは聞いていた。幼馴染との約束についての話である。

「だから、頑張って早く借金を返して帰ろうと思います。以上」

 話が締めくくられると、聴衆たちは拍手で応援の意を表した。
 幼馴染との淡い恋話というありふれた内容だったが、ありふれているからこそ身につまされる者も多い。

「いいなぁ……恋って、どんな感じ?」

 唇に人差し指をあててコリンが尋ねると、同級生たちがコリンを見た。

「そういう相手はいなかったの? 幼馴染とか」

「うん。周りに似たような年齢の子はいたけれど、ほとんど口もきかなかったし」

 島に売られる前に過ごしていた場所のことを思い出し、コリンは答える。

「口くらいきいておけよ。おまえ、案外冷たいんだな」

 咎めるような口調の同級生に、コリンはしゅんとうなだれる。

「だって……いつも、みんな疲れていたんだもの……」

「ああ、もしかして子供も作業の手伝いしなきゃいけなかったようなところ?」

 別の同級生が口を挟む。

「作業……なのかな。大人の男の人たちが来て、遊び相手にならなきゃいけなかったんだ。僕はそんなにひどいことはされなかったけれど、中には泣いている子もいた」

 コリンの言葉が、水面に投じた石のように響いた。穏やかにざわめいていた同級生たちが静まり返り、緊張が広がっていく。
 急におとなしくなってしまった同級生たちに、コリンは首を傾げる。

「コリン」

 すると教室の外から声がした。コリンと同じくミゼアス付きの見習いであるブラムだ。

「終わったなら、帰ろう。アルンも待っている」

 ブラムは教室に入ってきて、コリンの手を取る。

「あ……うん、ごめん。……じゃあ、僕、帰るね。またね」

 未だ誰も言葉を発しない同級生たちに別れの挨拶を述べると、コリンはブラムに手を引かれて教室を後にした。
 去り際にブラムが同級生たちを睨みつけていたようだったが、何故かはよくわからない。黙ったままの同級生たちといい、コリンにはよくわからないことばかりだ。
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