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五花をめざして10
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「三人を毒牙にかけたところで、学校の首席も金髪だと目をつけたんだろう。『アルンの上役を一晩買いたい』という申し出だったよ。それが僕だったなんて、最初は知らなかったみたい。断るのは簡単だったけれど、そうしたら別の子がまた犠牲になるだけだろう。ちょうど犠牲者の上役の子から泣きつかれたところでもあったし、どうにかしないといけないなと思ってね」
「犠牲者の上役?」
アルンは首を傾げる。
「ほら、犠牲者が三人いるだろう? その上役の子たちだって、喜んで自分付きの見習いを痛めつけたわけじゃないんだよ。全員三花だったし、有力貴族に逆らうことなんてできなかったんだ」
ミゼアスは眉を微かにしかめた。
「上役の子たちも身体こそ傷つけられなかったものの、心は傷つけられている。最初は不慮の事故ということでごまかそうともしていたようだけれど、だんだん良心の呵責に耐え切れなくなってきたんだろう。三人そろって、僕のところに来たんだよ」
「……そうだったんですか」
確かに規則に反していないというのなら、三花では逆らえなかったかもしれない。客より上の立場とされるのは、五花だけなのだ。
「うん、でも逆らえなかったとはいえ、見習いの子を傷つけたのは事実だ。その罰は受けてもらう。でもこれ以上の犠牲者を出さないようにしたいというのは、僕も同じだった。そこにちょうど、きみの上役としての僕を一晩買いたいという話がきてね。まっとうな相手でも本来なら受けないような内容なんだけれど、良い機会だと思って受けた」
「……だったら、教えてくださればよかったのに……」
アルンは唇を尖らせて呟く。
自分は犠牲にされると思ったのだ。ミゼアスに裏切られたと思って絶望し、恐怖に震えていた。教えてもらえれば、あんな思いはせずに済んだはずだ。
「教えたら緊張感がなくなると思って。あいつの気を緩ませるためにも、あえてきみには何も言わなかった。悪かったと思っているよ。怖い思いをさせてすまなかったね、アルン」
そう言って、ミゼアスはアルンの肩を優しく抱きしめた。
「うっ……ううっ……」
安心感と先ほどまでの恐怖感、やるせなさなど様々な感情がアルンの中に渦巻く。わけがわからなくなり、アルンはミゼアスにしがみついて泣いた。
怖かった、裏切られたかと思った、など高ぶった感情のままに様々な言葉をミゼアスにぶつけた。
ミゼアスは穏やかに頷きながらアルンの言葉を聞き、アルンが落ち着くまでずっと優しく背中をさすってくれていた。
「犠牲者の上役?」
アルンは首を傾げる。
「ほら、犠牲者が三人いるだろう? その上役の子たちだって、喜んで自分付きの見習いを痛めつけたわけじゃないんだよ。全員三花だったし、有力貴族に逆らうことなんてできなかったんだ」
ミゼアスは眉を微かにしかめた。
「上役の子たちも身体こそ傷つけられなかったものの、心は傷つけられている。最初は不慮の事故ということでごまかそうともしていたようだけれど、だんだん良心の呵責に耐え切れなくなってきたんだろう。三人そろって、僕のところに来たんだよ」
「……そうだったんですか」
確かに規則に反していないというのなら、三花では逆らえなかったかもしれない。客より上の立場とされるのは、五花だけなのだ。
「うん、でも逆らえなかったとはいえ、見習いの子を傷つけたのは事実だ。その罰は受けてもらう。でもこれ以上の犠牲者を出さないようにしたいというのは、僕も同じだった。そこにちょうど、きみの上役としての僕を一晩買いたいという話がきてね。まっとうな相手でも本来なら受けないような内容なんだけれど、良い機会だと思って受けた」
「……だったら、教えてくださればよかったのに……」
アルンは唇を尖らせて呟く。
自分は犠牲にされると思ったのだ。ミゼアスに裏切られたと思って絶望し、恐怖に震えていた。教えてもらえれば、あんな思いはせずに済んだはずだ。
「教えたら緊張感がなくなると思って。あいつの気を緩ませるためにも、あえてきみには何も言わなかった。悪かったと思っているよ。怖い思いをさせてすまなかったね、アルン」
そう言って、ミゼアスはアルンの肩を優しく抱きしめた。
「うっ……ううっ……」
安心感と先ほどまでの恐怖感、やるせなさなど様々な感情がアルンの中に渦巻く。わけがわからなくなり、アルンはミゼアスにしがみついて泣いた。
怖かった、裏切られたかと思った、など高ぶった感情のままに様々な言葉をミゼアスにぶつけた。
ミゼアスは穏やかに頷きながらアルンの言葉を聞き、アルンが落ち着くまでずっと優しく背中をさすってくれていた。
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