21 / 136
五花をめざして6
しおりを挟む
あまりに醜悪な道具に怯え、アルンは声も出ない。しかし、ミゼアスは冷淡な視線を男に向けるだけだった。
「お断りします。このような大きさのものは無理です」
凛とした態度でミゼアスは断る。
「何だと?」
「この大きさでは、僕だって無理です。無理に挿入しようとすれば傷つきます。お断りします」
ミゼアスのはっきりとした拒絶に、男は唇をわなわなと震わせる。
「……では、花代を二倍……いや、五倍にしてやろう。傷ついたところで、死ぬほどのことではない。治療費だって用意してやる。不慮の事故ということにすればいい」
「お断りします」
男の懐柔の言葉にもまったく耳を貸そうとしないミゼアス。
アルンは断り続けるミゼアスをただ眺めることしかできなかった。心には希望がふつふつとわいてくる。
「私を誰だと思っている! 卑しい男娼風情が逆らう気か!」
男が怒鳴るが、ミゼアスは動じない。
「この島にはこの島の掟があります。あなたが誰であろうが、ここでは客の一人。そして卑しい男娼風情だろうと、僕は五花です。この島において五花は客より上の立場です。館主ですら通常時は五花より下、五花より上はここの領主のみです。僕の意に沿わぬことは許しません」
アルンをかばうように立ち上がり、ミゼアスは毅然と言い放つ。
「な……な……」
怒りのあまり声を失う男。
その姿を見てミゼアスは腕を組み、鼻で笑った。
「金で何でも片がつくと思っているんじゃないよ、下衆が。偉そうにしているけれど、あんた何様? その金だってあんたの稼いだものじゃなくて、親からの借り物だろう? あんた自身には何の価値があるわけ? この島の連中なら、見習いだってあんたより知性も教養も上だよ。勘違いしているんじゃないよ。恥を知りな」
蔑んだ眼差しを向け、嘲笑うミゼアス。
あからさまな物言いに男は顔色を失って震え出す。面と向かってこのような侮辱を受けたことはないのだろう。
「こ……この……!」
男はぶるぶると震わせた拳を掲げたかと思うと、勢いにまかせて振り下ろした。
ミゼアスは避けようという素振りもなくその拳を受け、横に吹っ飛ばされた。酒瓶を置いてあった台にぶつかり、落下した酒瓶が派手な音をたてて砕け散る。
「ミゼアス兄さん!」
アルンが叫ぶと同時に、けたたましい鈴の音が鳴り響いた。
何事かとアルンだけではなく、男も音の出所を探ろうとする。
すると間をおくことなく扉が開かれ、二人の大男が入ってきた。大男たちは、振り下ろした拳をしまうことなく立ち尽くしている男を拘束する。
「暴力行為により、拘束します。こちらにどうぞ」
口調こそ丁寧だが、底冷えするような凄みのある声だった。
男は言葉を失い、顔面蒼白で震えながら連行されていく。
「お断りします。このような大きさのものは無理です」
凛とした態度でミゼアスは断る。
「何だと?」
「この大きさでは、僕だって無理です。無理に挿入しようとすれば傷つきます。お断りします」
ミゼアスのはっきりとした拒絶に、男は唇をわなわなと震わせる。
「……では、花代を二倍……いや、五倍にしてやろう。傷ついたところで、死ぬほどのことではない。治療費だって用意してやる。不慮の事故ということにすればいい」
「お断りします」
男の懐柔の言葉にもまったく耳を貸そうとしないミゼアス。
アルンは断り続けるミゼアスをただ眺めることしかできなかった。心には希望がふつふつとわいてくる。
「私を誰だと思っている! 卑しい男娼風情が逆らう気か!」
男が怒鳴るが、ミゼアスは動じない。
「この島にはこの島の掟があります。あなたが誰であろうが、ここでは客の一人。そして卑しい男娼風情だろうと、僕は五花です。この島において五花は客より上の立場です。館主ですら通常時は五花より下、五花より上はここの領主のみです。僕の意に沿わぬことは許しません」
アルンをかばうように立ち上がり、ミゼアスは毅然と言い放つ。
「な……な……」
怒りのあまり声を失う男。
その姿を見てミゼアスは腕を組み、鼻で笑った。
「金で何でも片がつくと思っているんじゃないよ、下衆が。偉そうにしているけれど、あんた何様? その金だってあんたの稼いだものじゃなくて、親からの借り物だろう? あんた自身には何の価値があるわけ? この島の連中なら、見習いだってあんたより知性も教養も上だよ。勘違いしているんじゃないよ。恥を知りな」
蔑んだ眼差しを向け、嘲笑うミゼアス。
あからさまな物言いに男は顔色を失って震え出す。面と向かってこのような侮辱を受けたことはないのだろう。
「こ……この……!」
男はぶるぶると震わせた拳を掲げたかと思うと、勢いにまかせて振り下ろした。
ミゼアスは避けようという素振りもなくその拳を受け、横に吹っ飛ばされた。酒瓶を置いてあった台にぶつかり、落下した酒瓶が派手な音をたてて砕け散る。
「ミゼアス兄さん!」
アルンが叫ぶと同時に、けたたましい鈴の音が鳴り響いた。
何事かとアルンだけではなく、男も音の出所を探ろうとする。
すると間をおくことなく扉が開かれ、二人の大男が入ってきた。大男たちは、振り下ろした拳をしまうことなく立ち尽くしている男を拘束する。
「暴力行為により、拘束します。こちらにどうぞ」
口調こそ丁寧だが、底冷えするような凄みのある声だった。
男は言葉を失い、顔面蒼白で震えながら連行されていく。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる