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五花をめざして3
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「アルン、今日は僕の手伝いをしてもらうよ」
今日の仕事に関する打ち合わせのとき、ミゼアスはそう言った。
「はい。何をすればいいでしょうか?」
素直に頷き、アルンは質問する。
「時間になるまでに、お風呂に入っておいて。とりあえずはそれだけ。ブラムとコリンは鳳仙花の間の準備をしておいて。といっても花月琴はいらないから、花瓶に適当な花でも飾っておいて」
ミゼアスの言葉を聞き、見習い三人が唖然とする。
風呂に入っておけという命令も命令なら、花月琴がいらないというのも初めての話だ。
ミゼアスは花月琴の名手で、演奏を聴きにくるだけの客も多い。床入りするにしても、必ず花月琴を奏でてからだ。下っ端のようにいきなり床入りなどはしない。
「あの……お風呂に入っておけというのは、どういうことでしょうか?」
おそるおそるアルンは尋ねる。
「今日のお客様は、きみと僕の絡みが見たいんだって。何でも金髪好きだそうで、きみも僕も金髪だからね。きみは僕に任せてくれればいいだけだから、難しいことはないよ」
肩をすくめるミゼアス。
アルンは同級生たちの話を思い出す。上役との絡み、金髪好き、条件が合致している。
ブラムとコリンもその話は知っているようで、ミゼアスとアルンを交互に見ておろおろとしていた。
「それは……もしかして……見習いたちにひどいことをしているっていう客ですか……?」
信じられないといった面持ちでアルンは問う。
きっと何かの間違いに違いない。たまたま条件が似ていただけの別の客だとアルンは自分に言い聞かせる。
「ひどいこと? どういうことだい? あぁ……そういえば、不慮の事故があったという話は聞いたな。命には別状はないそうだし、違反ではないだろう」
ミゼアスの答えがアルンには信じられなかった。
まさにあの話そのものだ。まさかミゼアスがそんなひどいことを許すなんて、これは悪い夢なのだろうかと思った。
「嫌です! その客、傷ついて苦しむのを見るのが好きだって! 僕、僕……そんなのは嫌です! ミゼアス兄さんならそんなこと! ミゼアス兄さんがっ! どうして、どうして……!」
何を言っているか自分でもわからなくなりながらアルンは叫び、泣き崩れた。
ブラムとコリンも信じられない様子でミゼアスを見る。
「アルン、これは命令だよ。きみに逆らう権利はない。時間までにお風呂に入り、身支度を整えておくように。いいね」
しかしミゼアスは冷めた目でアルンを見下ろし、冷淡に言い放った。
そして用件は伝え終わったとばかりに立ち上がり、部屋を出て行く。
後には泣き続けるアルンと、呆然と成り行きを受け入れることができないブラムとコリンが残された。
今日の仕事に関する打ち合わせのとき、ミゼアスはそう言った。
「はい。何をすればいいでしょうか?」
素直に頷き、アルンは質問する。
「時間になるまでに、お風呂に入っておいて。とりあえずはそれだけ。ブラムとコリンは鳳仙花の間の準備をしておいて。といっても花月琴はいらないから、花瓶に適当な花でも飾っておいて」
ミゼアスの言葉を聞き、見習い三人が唖然とする。
風呂に入っておけという命令も命令なら、花月琴がいらないというのも初めての話だ。
ミゼアスは花月琴の名手で、演奏を聴きにくるだけの客も多い。床入りするにしても、必ず花月琴を奏でてからだ。下っ端のようにいきなり床入りなどはしない。
「あの……お風呂に入っておけというのは、どういうことでしょうか?」
おそるおそるアルンは尋ねる。
「今日のお客様は、きみと僕の絡みが見たいんだって。何でも金髪好きだそうで、きみも僕も金髪だからね。きみは僕に任せてくれればいいだけだから、難しいことはないよ」
肩をすくめるミゼアス。
アルンは同級生たちの話を思い出す。上役との絡み、金髪好き、条件が合致している。
ブラムとコリンもその話は知っているようで、ミゼアスとアルンを交互に見ておろおろとしていた。
「それは……もしかして……見習いたちにひどいことをしているっていう客ですか……?」
信じられないといった面持ちでアルンは問う。
きっと何かの間違いに違いない。たまたま条件が似ていただけの別の客だとアルンは自分に言い聞かせる。
「ひどいこと? どういうことだい? あぁ……そういえば、不慮の事故があったという話は聞いたな。命には別状はないそうだし、違反ではないだろう」
ミゼアスの答えがアルンには信じられなかった。
まさにあの話そのものだ。まさかミゼアスがそんなひどいことを許すなんて、これは悪い夢なのだろうかと思った。
「嫌です! その客、傷ついて苦しむのを見るのが好きだって! 僕、僕……そんなのは嫌です! ミゼアス兄さんならそんなこと! ミゼアス兄さんがっ! どうして、どうして……!」
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「アルン、これは命令だよ。きみに逆らう権利はない。時間までにお風呂に入り、身支度を整えておくように。いいね」
しかしミゼアスは冷めた目でアルンを見下ろし、冷淡に言い放った。
そして用件は伝え終わったとばかりに立ち上がり、部屋を出て行く。
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