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五花をめざして1
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アルンは不夜島に数多くいる見習いの一人である。
淡い金色の髪と水色の瞳を持ち、顔立ちも愛らしい。柔らかく、優しげな印象を与える容姿だ。
五花であり白花の第一位であるミゼアス付きという立場のため、他の見習いたちと比べると格段に恵まれた待遇を受けている。
もともとアルンは今いる店とは別の店にいた。同じ不夜島の中ではあるが、それぞれの店によって雰囲気が異なるのだ。
アルンが以前いた店も上位の店ではあった。しかしそこでアルンの上役となった白花は、けちで人使いが荒かった。
その上役に付いてから、アルンは夕食を与えられた記憶がない。宴席のおこぼれをもらうことができた日だけ、飢えをしのげた。
夜も遅くまでこきつかわれた。たいした用事ではなくても叩き起こされることなど、珍しくもなかった。そのため、常に眠たくて学校では居眠りもしてしまっていたくらいだ。
毎日が大変で、このまま脱落してしまうのではないかとも思っていた。ところが、ある日を境にアルンの環境は一変した。
「この子、僕がもらうよ」
突然、輝く金髪の少年が現れたかと思うと、そう言ってアルンを当時の店から連れ出したのだ。
何が起こったかよくわからないまま、アルンは今の店にやってきた。そこで自分を連れ出したのが、五花にして白花の第一位であるミゼアスだと知ったのだ。驚き、信じられない思いでいっぱいだった。
「あんな、下をろくに育てないような奴に付かせておくにはもったいなさすぎる。僕が仕込んであげるよ」
そう言ってミゼアスはアルンの頭を撫で、微笑んだ。
何でも、成績が優秀で花月琴の才もあるのに、いつも居眠りをしている見習いがいるという話を聞いたのだという。このままだと潰れてしまうと思い、自分付きにしたのだとミゼアスは言った。
それからアルンの生活は変わった。
夕食は毎日きちんと与えられ、睡眠もしっかり取れる。学校での居眠りとも無縁になった。
むやみにこきつかわれることもなくなった。
ミゼアス付きとしての仕事はあったが、以前の上役のような筋の通らないやり方などミゼアスはしない。いっそ簡素といえるほど洗練されていた。
仕事や勉強、稽古事に関してミゼアスは厳しかった。
しかし、感情的に怒鳴り散らすなどということはしない。間違いはどう改めるべきか指摘され、良いところがあれば褒めて頭を撫でてもらえる。
アルンはミゼアスに褒めてもらえることが嬉しく、よりいっそう頑張った。
当代一とすらいわれる花月琴の名手であるミゼアスの手ほどきを受けることができ、勉強も見てもらえる。
何より、白花の頂点が客を迎える姿を間近で見ることができ、所作を学べるのだ。
見習いとしてこれ以上の環境があるとは思えなかった。
優しく守ってくれ、時には厳しく導いてくれるミゼアス。
博打で借金を作り、あっさりとアルンを手放した実の親よりもよほどアルンのことを大切にしてくれ、アルンにとっては太陽のような存在だった。
アルンは心からミゼアスを慕い、ずっとこのままの時が続けばよいと思っていた。
淡い金色の髪と水色の瞳を持ち、顔立ちも愛らしい。柔らかく、優しげな印象を与える容姿だ。
五花であり白花の第一位であるミゼアス付きという立場のため、他の見習いたちと比べると格段に恵まれた待遇を受けている。
もともとアルンは今いる店とは別の店にいた。同じ不夜島の中ではあるが、それぞれの店によって雰囲気が異なるのだ。
アルンが以前いた店も上位の店ではあった。しかしそこでアルンの上役となった白花は、けちで人使いが荒かった。
その上役に付いてから、アルンは夕食を与えられた記憶がない。宴席のおこぼれをもらうことができた日だけ、飢えをしのげた。
夜も遅くまでこきつかわれた。たいした用事ではなくても叩き起こされることなど、珍しくもなかった。そのため、常に眠たくて学校では居眠りもしてしまっていたくらいだ。
毎日が大変で、このまま脱落してしまうのではないかとも思っていた。ところが、ある日を境にアルンの環境は一変した。
「この子、僕がもらうよ」
突然、輝く金髪の少年が現れたかと思うと、そう言ってアルンを当時の店から連れ出したのだ。
何が起こったかよくわからないまま、アルンは今の店にやってきた。そこで自分を連れ出したのが、五花にして白花の第一位であるミゼアスだと知ったのだ。驚き、信じられない思いでいっぱいだった。
「あんな、下をろくに育てないような奴に付かせておくにはもったいなさすぎる。僕が仕込んであげるよ」
そう言ってミゼアスはアルンの頭を撫で、微笑んだ。
何でも、成績が優秀で花月琴の才もあるのに、いつも居眠りをしている見習いがいるという話を聞いたのだという。このままだと潰れてしまうと思い、自分付きにしたのだとミゼアスは言った。
それからアルンの生活は変わった。
夕食は毎日きちんと与えられ、睡眠もしっかり取れる。学校での居眠りとも無縁になった。
むやみにこきつかわれることもなくなった。
ミゼアス付きとしての仕事はあったが、以前の上役のような筋の通らないやり方などミゼアスはしない。いっそ簡素といえるほど洗練されていた。
仕事や勉強、稽古事に関してミゼアスは厳しかった。
しかし、感情的に怒鳴り散らすなどということはしない。間違いはどう改めるべきか指摘され、良いところがあれば褒めて頭を撫でてもらえる。
アルンはミゼアスに褒めてもらえることが嬉しく、よりいっそう頑張った。
当代一とすらいわれる花月琴の名手であるミゼアスの手ほどきを受けることができ、勉強も見てもらえる。
何より、白花の頂点が客を迎える姿を間近で見ることができ、所作を学べるのだ。
見習いとしてこれ以上の環境があるとは思えなかった。
優しく守ってくれ、時には厳しく導いてくれるミゼアス。
博打で借金を作り、あっさりとアルンを手放した実の親よりもよほどアルンのことを大切にしてくれ、アルンにとっては太陽のような存在だった。
アルンは心からミゼアスを慕い、ずっとこのままの時が続けばよいと思っていた。
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