不夜島の少年 小話集

四葉 翠花

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師匠と呼ばせて5

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「なるほど……目が覚めた気分です。素晴らしいです、アデルジェスさん! 師匠と呼ばせてください!」

 ブラムは感激のあまり、そう叫んでいた。

「ええっ!?」

 アデルジェスが驚いた声をあげ、困ったように視線をさまよわせる。
 おそらくこれはアデルジェスにとっては基本中の基本なのだろう。この程度のことで感激してしまった浅学なブラムに驚いているのだ。
 ブラムは己の無知を恥じるとともに、より高みを目指す決意をした。

「それで、アデルジェスさん……いえ、師匠はどうやって技を身に着けたのですか? どんな訓練をされたのでしょう?」

 ブラムの質問にアデルジェスは考え込む。

「まあ……まずは身体を作ることかなあ……。瞬発力だけじゃなく、持久力も必要だし」

 ややあって、答えが返ってきた。
 確かに持久力は必要だろう。瞬発力はいかに素早く臨戦態勢に入ることができるか、ということだろうか。何にせよ、そのための身体作りが必要らしい。

「なるほど。……ところで、お好きな食べ物は何ですか?」

 身体作りといえば、まず思い当たったのが食べ物だ。

「うーん……きのこのチーズ焼きかな」

 アデルジェスの回答を聞いて、納得する。
 きのこといえば、精力増強に効果があるという話は有名だ。チーズも確か、そういった効果があると聞いたことがあったような気がする。

「なるほど、効きそうですね」

「え? あぁ……美味しいよ」

 精力をつけて、夜も美味しく頂くということだろう。
 相手を楽しませ、自分も楽しむ。やはり一方通行ではよろしくない。お互いに想いを通わせて楽しむのだという教えだろう。

「それと、どうしても腰を痛めがちになるかと思うのですが、そこはどうやって対処されていますか?」

 先ほどの精神論は大変ためになったが、やはり技術的なことも聞いておきたい。相手によらず普遍的であろうものについて尋ねてみる。

「そうだね……腰だけではなく、身体全体を使うようにすることかな。いったん屈みこんで、密着させてからゆっくり持ち上げるようにするといいと思うよ」

 アデルジェスがこつを教えてくれる。一部だけではなく、全体の動きを考えなくてはならないのだ。やはり奥が深い。

「なるほど……身体全体ですか。密着させてからゆっくり……ためになります」

 本当にアデルジェスの話はためになることばかりだ。ブラムは感心することしかできなかった。
 せっかくの機会を逃してはならない。ブラムはそれからも疑問点をアデルジェスに尋ねていくのだった。
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