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それぞれの夜~ヴァレンとエアイール~
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「失恋確定、おっめでとー!」
陽気なヴァレンの声が響く。
「……わたくし、常々どうしてあなたを早いうちに殺っておかなかったのだろうと後悔いたします」
ため息を漏らすエアイール。
「えー、そんな物騒なこと言うなよ。俺たち、同期じゃないか」
ヴァレンはあっけらかんと笑う。
「そもそも、あなたはミゼアスから色々と引き継いだのでしょう。こんなところにやってこられるほど暇ではないのでは?」
「まあ忙しいんだけれどさ。同期のよしみで、様子を見に来てやったんだよ。おまえ、昔からミゼアス兄さんのこと大好きだったもんなぁ。ああ、ミゼアス兄さん秘蔵の酒も持ってきたよ」
飲もう飲もうとヴァレンは酒を取り出す。エアイールはさらに大きなため息を漏らしながらも、止めることはしなかった。
「……最初から、ひとかけらの望みもないことはわかりきっていましたよ。でも、だからといってどうにかできるものでもないでしょう。心などままならぬものです」
「フェリスがジェスさんを殺そうとしたとき、本当はどうしようと思っていたわけ? あのとき、ジェスさんが死ねばミゼアス兄さんだって命を繋げないらしいって俺が言っていなかったら、黙認しようとしていた?」
「さあ、どうでしょうね。もう過ぎたことです。ミゼアスはアデルジェスさんと共に島を去りました。それが現実です」
エアイールはそう言って杯をゆっくりと口に運ぶ。
「……いっそ、殺されるくらい憎まれたほうが、思いを独り占めできたかもしれませんけれどね。あの瞳を憎悪にたぎらせ、睨みつけられたらどれほどの悦びかと想像したことはありますよ」
「おまえ、自己陶酔型の被虐趣味?」
「かもしれませんね。でも、わたくしは度胸がないのですよ。それなので、ただ寂しさに打ち震えるだけです」
くすくすと笑い、エアイールはヴァレンから杯を取り上げて手首をつかむ。そしてそのまま覆いかぶさるようにヴァレンを押し倒した。
「寂しくて仕方がありません。慰めてくれますか?」
からかうような微笑を浮かべて囁くエアイールに、ヴァレンもくすりと笑う。
「いいよ。この体勢っていうことは、おまえが突っ込むの? 別に構わないけれど。……ほら、いっぱい甘やかして慰めてやるよ」
陽気なヴァレンの声が響く。
「……わたくし、常々どうしてあなたを早いうちに殺っておかなかったのだろうと後悔いたします」
ため息を漏らすエアイール。
「えー、そんな物騒なこと言うなよ。俺たち、同期じゃないか」
ヴァレンはあっけらかんと笑う。
「そもそも、あなたはミゼアスから色々と引き継いだのでしょう。こんなところにやってこられるほど暇ではないのでは?」
「まあ忙しいんだけれどさ。同期のよしみで、様子を見に来てやったんだよ。おまえ、昔からミゼアス兄さんのこと大好きだったもんなぁ。ああ、ミゼアス兄さん秘蔵の酒も持ってきたよ」
飲もう飲もうとヴァレンは酒を取り出す。エアイールはさらに大きなため息を漏らしながらも、止めることはしなかった。
「……最初から、ひとかけらの望みもないことはわかりきっていましたよ。でも、だからといってどうにかできるものでもないでしょう。心などままならぬものです」
「フェリスがジェスさんを殺そうとしたとき、本当はどうしようと思っていたわけ? あのとき、ジェスさんが死ねばミゼアス兄さんだって命を繋げないらしいって俺が言っていなかったら、黙認しようとしていた?」
「さあ、どうでしょうね。もう過ぎたことです。ミゼアスはアデルジェスさんと共に島を去りました。それが現実です」
エアイールはそう言って杯をゆっくりと口に運ぶ。
「……いっそ、殺されるくらい憎まれたほうが、思いを独り占めできたかもしれませんけれどね。あの瞳を憎悪にたぎらせ、睨みつけられたらどれほどの悦びかと想像したことはありますよ」
「おまえ、自己陶酔型の被虐趣味?」
「かもしれませんね。でも、わたくしは度胸がないのですよ。それなので、ただ寂しさに打ち震えるだけです」
くすくすと笑い、エアイールはヴァレンから杯を取り上げて手首をつかむ。そしてそのまま覆いかぶさるようにヴァレンを押し倒した。
「寂しくて仕方がありません。慰めてくれますか?」
からかうような微笑を浮かべて囁くエアイールに、ヴァレンもくすりと笑う。
「いいよ。この体勢っていうことは、おまえが突っ込むの? 別に構わないけれど。……ほら、いっぱい甘やかして慰めてやるよ」
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