呪われた王女は黒狼王の牙に甘く貫かれる

四葉 翠花

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20.第一歩

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 シャツのボタンをはずしながらデイネストも寝台の上に乗り、セレディローサに覆いかぶさるように見下ろしてくる。

「俺はセレディローサを王妃として迎えたい。受け入れてくれるか?」

「え……あ……はい……」

「ありがとう」

 余裕のある微笑みを浮かべるデイネストから熱のこもった視線を受け、セレディローサの胸ははじけそうに高鳴る。かつてのデイネストは、食いしん坊の少年という印象が強かった。今、目の前にいる大人の男は、いったい誰なのだろう。

「ね……ねえ、どうして服を脱ぐの?」

「ん? セレディローサを食べてしまうんだ」

 答えながら、デイネストは自らの服を脱いでいく。
 やはり目の前の男は黒狼王で、これから牙で貫かれて食べられてしまうのだろうか。一瞬、恐れがわきあがったものの、セレディローサは何かがおかしいと首を捻る。

「……じゃあ、どうしてあなたが脱いでいるの?」

 セレディローサを食べるつもりなら、セレディローサだけを脱がせればよいはずだ。

「えーと、つまり夫婦の営みをしようと思ってるんだけど……もしかして、知らない?」

「ご……ごめんなさい……よくわからないわ……」

 嫁ぐための教育を受けていないセレディローサには未知の世界だった。イリナから、夫婦は子作りの儀式をすると聞いたことはあったが、詳しい内容までは知らない。

「うーん……」

 デイネストが人差し指で右の眉を掻く。懐かしい仕草に、ついセレディローサの頬がゆるんだ。

「……あなた、やっぱりデイネストなのね。こんなに立派になってしまって戸惑ったけれど、やっぱりあなたはあなたなんだわ」

 身を起こし、そっとデイネストの頬に手を伸ばしながらセレディローサは囁く。
 ここにいるのは見知らぬ男ではない。セレディローサのために呪いを解く方法を見つけると約束し、実際に迎えに来てくれたデイネストなのだ。
 その彼がすることなら、恐ろしいことなどあるはずがない。

「そうか? えっと、怖いかもしれないけれど、呪いを終わらせるためにも必要なんだ。俺にまかせてくれればいいだけだから、少し我慢して」

「……ええ、すべてあなたにまかせっぱなしで心苦しいけれど……よろしくお願いします」

「あ……うん、こちらこそ」

 寝台の上で、二人向き合って互いに礼をする。
 ぎこちなくも、夫婦としての第一歩を踏み出したのだった。
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