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15.流れゆく日々

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 それから半年ほど過ぎ、デイネストからの手紙が届いた。
 式典で西国からの使者が訪れた際、もたらされたのである。
 どきどきと高鳴る胸を沈めようとしながら封を開けると、押し花のしおりが出てきた。深い青みのある小さな花弁が重なった、見たこともないような花である。
 手紙を読めば、デイネストの国に咲く花だという。先日、話をしたときに見てみたいと言っていたので、押し花だけれども送ると書いてあった。

 セレディローサは手紙と押し花のしおりを胸に優しく抱きしめ、目を閉じる。
 まさか、こんな贈り物をもらえるとは思わなかった。くすぐったいような幸福がセレディローサの胸に踊る。
 急いで返事を書き、イリナに頼んで西国の使者に渡してもらった。

 しばらく何の音沙汰もなく、果たして本当に届いたのだろうかと気がかりではあったが、また半年ほど経ってから返事がきた。
 内容は他愛もない日常のことだったが、セレディローサは穏やかな幸福に満たされる。
 もしかしたら幸福のうちに生を終えるというのは、こういうことなのだろうかとも思い浮かんだ。しかし、デイネストが呪いを解く方法を見つけるといった言葉を信じようと、思いを振り払う。
 また急いで返事を書き、イリナを経由して西国の使者に託した。

 こうしたやり取りを数回繰り返した後、デイネストからは何の音沙汰もなくなってしまった。それどころか、西国からの使者すら途絶えたのだ。
 何があったのかと不安になっていたところ、隣国の王が崩御したのだという知らせを耳にした。しかも王位争いで内乱が起こったのだという。王は長男である正妃の子を差し置き、妾妃の子を跡継ぎに指名したそうだ。
 この国では内乱には手出し無用、勝った側につくという姿勢を決めたらしい。何らかの影響はあるにせよ、直接火の粉がふりかかってくるわけでもないこの国では平和が続いている。

 いつもと変わらぬ日常を人々が送る中、穏やかな幸福を覚えていたセレディローサの心は憂いに満たされた。
 デイネストがどうなったのかはわからない。ただ、外交官の息子というのなら、巻き込まれている可能性が高いだろう。ただひたすら、無事を祈る日々が続く。
 しかしいつまで待っても、デイネストからは何の連絡もなかった。何もできずに時だけが流れていく。

 セレディローサは空虚な思いに心を削られる。一度知ってしまった穏やかな幸福は、セレディローサの心を大きく抉って消えてしまったようだった。
 本当は呪いをゆるめることができておらず、恐怖と苦痛のうちに生を終えることになるのではないだろうかとすら思えてくる。

 とうとう不安のうちに、セレディローサは呪いで宣告された十八歳を迎えた。
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