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13.わずかな希望の光
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デイネストは求婚した日を最後に、国へと帰っていった。
必ず迎えに来るから、と言い残して。
セレディローサには元どおりの日常が戻ってきたはずなのだが、普段と同じように薬草園で葉を摘みながら、心はどこか遠くに飛んでしまっているようだ。
彼がいなくなったことにより、胸の中にはぽっかりと穴が開いたようだった。しかし、同時にぼんやりとした温かいものに包まれているのを感じる。
まさか、自分に求婚するような男がいるとは考えもしなかった。
王族や貴族にとって、結婚とは家と家との結びつきだ。互いの結束を深め、あるいは監視し合いながら、血を混じり合わせるためのもの。
セレディローサにとっては無縁のものとなるはずだった。
場合によっては、いっときだけでも王家の娘が欲しいということがあるかもしれない。しかし、デイネストにそういった素振りはなかった。
一緒に遠い場所に行って平民として生きようとも言ってくれた。『王女』としてではない、ただの『セレディローサ』を見てくれたのだ。
さらに呪いを解く方法を見つけるとも言ってくれた。
今まで誰一人として、探そうとすらしなかったものだ。当のセレディローサですら、魔女の呪いは絶対だとあきらめていた。
嬉しかった。初めて与えられた、ごくわずかな希望の光はセレディローサの心を満たしてくれた。
おそらく、魔女の呪いを解くことは無理だ。過去にそういった例はないという。
しかし、あの日の強い意志を宿したデイネストの瞳を思い出すと、もしかしたらとも思えてくるのだ。
セレディローサはずっと絶望の中で、それを絶望と思わないように心を閉じこめていた。今は、いっときでも希望があるという錯覚の中に身を浸していられる。
たとえそれが無慈悲に打ち砕かれる日が来ても、この喜びを忘れることはないだろう。
必ず迎えに来るから、と言い残して。
セレディローサには元どおりの日常が戻ってきたはずなのだが、普段と同じように薬草園で葉を摘みながら、心はどこか遠くに飛んでしまっているようだ。
彼がいなくなったことにより、胸の中にはぽっかりと穴が開いたようだった。しかし、同時にぼんやりとした温かいものに包まれているのを感じる。
まさか、自分に求婚するような男がいるとは考えもしなかった。
王族や貴族にとって、結婚とは家と家との結びつきだ。互いの結束を深め、あるいは監視し合いながら、血を混じり合わせるためのもの。
セレディローサにとっては無縁のものとなるはずだった。
場合によっては、いっときだけでも王家の娘が欲しいということがあるかもしれない。しかし、デイネストにそういった素振りはなかった。
一緒に遠い場所に行って平民として生きようとも言ってくれた。『王女』としてではない、ただの『セレディローサ』を見てくれたのだ。
さらに呪いを解く方法を見つけるとも言ってくれた。
今まで誰一人として、探そうとすらしなかったものだ。当のセレディローサですら、魔女の呪いは絶対だとあきらめていた。
嬉しかった。初めて与えられた、ごくわずかな希望の光はセレディローサの心を満たしてくれた。
おそらく、魔女の呪いを解くことは無理だ。過去にそういった例はないという。
しかし、あの日の強い意志を宿したデイネストの瞳を思い出すと、もしかしたらとも思えてくるのだ。
セレディローサはずっと絶望の中で、それを絶望と思わないように心を閉じこめていた。今は、いっときでも希望があるという錯覚の中に身を浸していられる。
たとえそれが無慈悲に打ち砕かれる日が来ても、この喜びを忘れることはないだろう。
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