104 / 133
第三章 巡り会い
104.雑貨屋の手伝い
しおりを挟む
リーゼに勉強を教え、宿のおかみさんとリーゼから料理を教わって、アデルジェスの帰りを待つのが日課だったミゼアスだが、もうひとつ新しい日課が増えた。
雑貨屋の手伝いである。
不夜島にて先輩の白花だったマリオンと七年ぶりの再会を果たし、彼とその夫が経営している雑貨屋を手伝うことにしたのだ。
まずはそれまでの荷役作業の仕事を終え、次の仕事を探そうとしていたアデルジェスへの誘いがあった。
「近々、ここの領主主催の宴があってね。それを見込んで、商売人たちも集まってきているんだ。たまには働けと、商会を任せた弟からもせっつかれている。仕方がないから少し動こうかと思うんだが、よかったら護衛を頼めないかな?」
イーノスから、このような申し出を受けたのだ。
ちょうど仕事が途切れたところだったので、アデルジェスにとってこの誘いはありがたかったようだ。
イーノスに確認してみたところ、どこか別の町へ行くわけでもなく、この町で取引を行う際に護衛として側にいてくれればよいという。
「まあ、実際に荒っぽいことが起こることはまずないと思うけれどね。威圧というか飾りというか、とりあえず立っていてくれればいいんだ」
その後、提示された報酬などの条件も悪くなく、アデルジェスはイーノスの護衛として働くことになった。
すると、イーノスがアデルジェスを獲得したので今度はミゼアスだというように、マリオンから話があった。
ミゼアスに見合うような竪琴はこの店にはない。取り寄せるので、それまで待ってくれないだろうかというのだ。
急ぐわけでもないので構わなかったが、そもそもミゼアスにしてみれば特別良い品でなくとも構わない。それなりに良い竪琴もあったので、それでよいと言ったのだが、マリオンは首を横に振った。
「あなたに最高級品以外のものなど、許せません」
きっぱりと言い切られてしまい、ミゼアスはどうしたものかと頭を悩ませた。
さすがに最高級品ともなれば値も張るだろう。現在のミゼアスにそこまでの手持ちはない。島にいた頃であれば問題なく払えただろうが、今のつつましい『およめさん』としては無理な金額と思われた。
「それに、せっかくこうして再会できたのです。あなたが島を出たお祝い、結婚したお祝いも含めて贈らせていただきますよ」
ミゼアスが考え込んでいると、今度はこう提示された。
さすがにそこまでの品をもらうのは気が引けると言ったが、マリオンは穏やかな態度を崩さない。それどころか狙いどおりといったような満足げな笑みが口元を彩る。
「それならしばらくの間、差額分としてこの店を手伝ってもらえますか?」
こうして、ミゼアスもマリオンの手伝いをすることになったのだった。
雑貨屋の手伝いである。
不夜島にて先輩の白花だったマリオンと七年ぶりの再会を果たし、彼とその夫が経営している雑貨屋を手伝うことにしたのだ。
まずはそれまでの荷役作業の仕事を終え、次の仕事を探そうとしていたアデルジェスへの誘いがあった。
「近々、ここの領主主催の宴があってね。それを見込んで、商売人たちも集まってきているんだ。たまには働けと、商会を任せた弟からもせっつかれている。仕方がないから少し動こうかと思うんだが、よかったら護衛を頼めないかな?」
イーノスから、このような申し出を受けたのだ。
ちょうど仕事が途切れたところだったので、アデルジェスにとってこの誘いはありがたかったようだ。
イーノスに確認してみたところ、どこか別の町へ行くわけでもなく、この町で取引を行う際に護衛として側にいてくれればよいという。
「まあ、実際に荒っぽいことが起こることはまずないと思うけれどね。威圧というか飾りというか、とりあえず立っていてくれればいいんだ」
その後、提示された報酬などの条件も悪くなく、アデルジェスはイーノスの護衛として働くことになった。
すると、イーノスがアデルジェスを獲得したので今度はミゼアスだというように、マリオンから話があった。
ミゼアスに見合うような竪琴はこの店にはない。取り寄せるので、それまで待ってくれないだろうかというのだ。
急ぐわけでもないので構わなかったが、そもそもミゼアスにしてみれば特別良い品でなくとも構わない。それなりに良い竪琴もあったので、それでよいと言ったのだが、マリオンは首を横に振った。
「あなたに最高級品以外のものなど、許せません」
きっぱりと言い切られてしまい、ミゼアスはどうしたものかと頭を悩ませた。
さすがに最高級品ともなれば値も張るだろう。現在のミゼアスにそこまでの手持ちはない。島にいた頃であれば問題なく払えただろうが、今のつつましい『およめさん』としては無理な金額と思われた。
「それに、せっかくこうして再会できたのです。あなたが島を出たお祝い、結婚したお祝いも含めて贈らせていただきますよ」
ミゼアスが考え込んでいると、今度はこう提示された。
さすがにそこまでの品をもらうのは気が引けると言ったが、マリオンは穏やかな態度を崩さない。それどころか狙いどおりといったような満足げな笑みが口元を彩る。
「それならしばらくの間、差額分としてこの店を手伝ってもらえますか?」
こうして、ミゼアスもマリオンの手伝いをすることになったのだった。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
薫る薔薇に盲目の愛を
不来方しい
BL
代々医師の家系で育った宮野蓮は、受験と親からのプレッシャーに耐えられず、ストレスから目の機能が低下し見えなくなってしまう。
目には包帯を巻かれ、外を遮断された世界にいた蓮の前に現れたのは「かずと先生」だった。
爽やかな声と暖かな気持ちで接してくれる彼に惹かれていく。勇気を出して告白した蓮だが、彼と気持ちが通じ合うことはなかった。
彼が残してくれたものを胸に秘め、蓮は大学生になった。偶然にも駅前でかずとらしき声を聞き、蓮は追いかけていく。かずとは蓮の顔を見るや驚き、目が見える人との差を突きつけられた。
うまく話せない蓮は帰り道、かずとへ文化祭の誘いをする。「必ず行くよ」とあの頃と変わらない優しさを向けるかずとに、振られた過去を引きずりながら想いを募らせていく。
色のある世界で紡いでいく、小さな暖かい恋──。
愛して、許して、一緒に堕ちて・オメガバース【完結】
華周夏
BL
Ωの身体を持ち、αの力も持っている『奏』生まれた時から研究所が彼の世界。ある『特殊な』能力を持つ。
そんな彼は何より賢く、美しかった。
財閥の御曹司とは名ばかりで、その特異な身体のため『ドクター』の庇護のもと、実験体のように扱われていた。
ある『仕事』のために寮つきの高校に編入する奏を待ち受けるものは?
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
好きな人の婚約者を探しています
迷路を跳ぶ狐
BL
一族から捨てられた、常にネガティブな俺は、狼の王子に拾われた時から、王子に恋をしていた。絶対に叶うはずないし、手を出すつもりもない。完全に諦めていたのに……。口下手乱暴王子×超マイナス思考吸血鬼
*全12話+後日談1話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる