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第三章 巡り会い
85.足でする
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「……娼館に『不夜島のミゼアス』がいる、か。そんなもの、箔付けのでたらめに決まっているだろう。一か月半もすれば、島を出たっていう噂も流れるだろうし。きっと、各地に何人もの『不夜島のミゼアス』がいるよ」
寝台に足を組んで腰掛け、ミゼアスはつまらなさそうな顔をする。
「そう、ですか……」
床に膝を畳んで座りながら、アデルジェスはつい敬語になってしまう。
硬い床からもたらされる足の痺れや痛みよりも、ミゼアスの冷たい視線のほうがつらい。
「買う側だって、本気にしちゃいないよ。もしかしたら……っていう期待くらいは持っているかもしれないけれどね。で、きみはそんな噂を本気にしたのかい?」
ミゼアスの声も冷たく、刺々しい。
「申し訳ございません……」
ただひたすらに謝ることしかできず、アデルジェスは同じ言葉を繰り返す。
「……ひどいよ……僕、『およめさん』なのに、そんなことするわけがない……」
悲しそうなミゼアスの呟きと共に、ぽとり、と床に涙がこぼれ落ちた。アデルジェスは俯いていた顔をはっと上げる。
ミゼアスは泣いていた。とんでもない過ちを犯してしまったと、アデルジェスは後悔の念に苛まれる。
罵られるほうが、よほど楽だ。いっそ殴られ、蹴られたほうがアデルジェスの自責の念も収まりがついただろう。
どうにかミゼアスの涙を止める方法はないだろうか。考えをそらすことができるのならば、もう何でもよい。アデルジェスは必死に考える。
「ち……違うんだ……! そ、そうだ! 足でするっていうことに興味があって、俺にはしてくれないのかって嫉妬して、つい変なことを言っちゃったんだ!」
寝台に足を組んで腰掛け、ミゼアスはつまらなさそうな顔をする。
「そう、ですか……」
床に膝を畳んで座りながら、アデルジェスはつい敬語になってしまう。
硬い床からもたらされる足の痺れや痛みよりも、ミゼアスの冷たい視線のほうがつらい。
「買う側だって、本気にしちゃいないよ。もしかしたら……っていう期待くらいは持っているかもしれないけれどね。で、きみはそんな噂を本気にしたのかい?」
ミゼアスの声も冷たく、刺々しい。
「申し訳ございません……」
ただひたすらに謝ることしかできず、アデルジェスは同じ言葉を繰り返す。
「……ひどいよ……僕、『およめさん』なのに、そんなことするわけがない……」
悲しそうなミゼアスの呟きと共に、ぽとり、と床に涙がこぼれ落ちた。アデルジェスは俯いていた顔をはっと上げる。
ミゼアスは泣いていた。とんでもない過ちを犯してしまったと、アデルジェスは後悔の念に苛まれる。
罵られるほうが、よほど楽だ。いっそ殴られ、蹴られたほうがアデルジェスの自責の念も収まりがついただろう。
どうにかミゼアスの涙を止める方法はないだろうか。考えをそらすことができるのならば、もう何でもよい。アデルジェスは必死に考える。
「ち……違うんだ……! そ、そうだ! 足でするっていうことに興味があって、俺にはしてくれないのかって嫉妬して、つい変なことを言っちゃったんだ!」
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