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第三章 巡り会い
79.料理の勉強
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この宿は、とりあえず一週間分の宿賃を前払いしている。
アデルジェスは滞在中、どこか働き口を探すつもりだったそうだ。ただ、一人で働きに行ってしまうと、その間はミゼアスを一人にさせてしまう。
どうしようかと思っていたが、ミゼアスが料理を教わることになったのでちょうどよかったと、アデルジェスは笑った。
「勝手に決めて、ごめんね……」
「いや、俺が働きに行くっていうのも勝手に決めたことだし、お互い様だよ。それに、お互いちょうどよかったんじゃないかな」
「うん……ジェスに美味しいものを食べさせてあげるからね」
「楽しみにしているよ」
どちらからともなく、口づけを交わす。そのまま、二人でくすくすと笑いながら、寝台にもつれこんだ。
朝になり、食事を終えるとアデルジェスは仕事を探しに行った。ミゼアスは東国の言葉を教えて、料理を教えてもらう約束をした少女と、お勉強の時間だ。
少女はこの宿の娘で、リーゼという名だった。東国の言葉を教えながらいろいろと話をすると、どうやら東国出身の船乗りが今度来たときに、向こうの言葉で話して驚かせたいらしい。
淡い恋心がくすぐったく、微笑ましい。ミゼアスは応援する気持ちもこめて、丁寧に教えていく。
熱心なリーゼの勉強が終わると、今度はミゼアスの花嫁修業の番だ。リーゼの母である、宿のおかみさんからも教わることになった。
「あらあら、男の子の花嫁さんなんて、久しぶりにお会いするわ。旦那様のために料理を頑張りたいなんて、旦那様は幸せねぇ。何でも聞いてちょうだい」
おっとりしたおかみさんから励ましの言葉をもらい、ミゼアスは頑張ろうと決意を深くする。
「ええと、それじゃあまず質問ね。今までにどれくらい料理をしたことがあるのかしら?」
「一回だけ、スープと肉団子を作ったことがあります」
「じゃあ、それ以外にお手伝いをしたようなことは?」
「材料を運んだことがあります」
きっぱりと言い切ると、おかみさんとリーゼが一瞬の沈黙の後、生温かい笑顔を浮かべた。
「……そうねえ……じゃあ、まずは簡単なものがいいわね。一緒に材料を切るところからやっていきましょう」
生温かい笑みを浮かべたまま、おかみさんが準備を始める。さすがに手際がよく、後ろ姿にも歴戦の重みが漂っているようだ。
ただ、以前フィオンから料理を教わったときにも、この二人と似たような笑みを浮かべられた。あの生温かい笑みは、いったい何なのだろうか。
ミゼアスは首を傾げつつも、待ち望んだ料理の勉強に集中しようと頭を切り替えた。
アデルジェスは滞在中、どこか働き口を探すつもりだったそうだ。ただ、一人で働きに行ってしまうと、その間はミゼアスを一人にさせてしまう。
どうしようかと思っていたが、ミゼアスが料理を教わることになったのでちょうどよかったと、アデルジェスは笑った。
「勝手に決めて、ごめんね……」
「いや、俺が働きに行くっていうのも勝手に決めたことだし、お互い様だよ。それに、お互いちょうどよかったんじゃないかな」
「うん……ジェスに美味しいものを食べさせてあげるからね」
「楽しみにしているよ」
どちらからともなく、口づけを交わす。そのまま、二人でくすくすと笑いながら、寝台にもつれこんだ。
朝になり、食事を終えるとアデルジェスは仕事を探しに行った。ミゼアスは東国の言葉を教えて、料理を教えてもらう約束をした少女と、お勉強の時間だ。
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淡い恋心がくすぐったく、微笑ましい。ミゼアスは応援する気持ちもこめて、丁寧に教えていく。
熱心なリーゼの勉強が終わると、今度はミゼアスの花嫁修業の番だ。リーゼの母である、宿のおかみさんからも教わることになった。
「あらあら、男の子の花嫁さんなんて、久しぶりにお会いするわ。旦那様のために料理を頑張りたいなんて、旦那様は幸せねぇ。何でも聞いてちょうだい」
おっとりしたおかみさんから励ましの言葉をもらい、ミゼアスは頑張ろうと決意を深くする。
「ええと、それじゃあまず質問ね。今までにどれくらい料理をしたことがあるのかしら?」
「一回だけ、スープと肉団子を作ったことがあります」
「じゃあ、それ以外にお手伝いをしたようなことは?」
「材料を運んだことがあります」
きっぱりと言い切ると、おかみさんとリーゼが一瞬の沈黙の後、生温かい笑顔を浮かべた。
「……そうねえ……じゃあ、まずは簡単なものがいいわね。一緒に材料を切るところからやっていきましょう」
生温かい笑みを浮かべたまま、おかみさんが準備を始める。さすがに手際がよく、後ろ姿にも歴戦の重みが漂っているようだ。
ただ、以前フィオンから料理を教わったときにも、この二人と似たような笑みを浮かべられた。あの生温かい笑みは、いったい何なのだろうか。
ミゼアスは首を傾げつつも、待ち望んだ料理の勉強に集中しようと頭を切り替えた。
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