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第二章 南へ
51.肉団子
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フィオンを騙そうとしていた男を警備兵に送り届け、アデルジェスへの土産用の肉団子を持ってミゼアスは宿に戻ってきた。
ただ途中からフィオンの態度がどうもよそよそしくなり、敬語を使うようになっていたのは何故だろうか。よくわからない。
それでも今日は料理を少し教わることもできた。順調に花嫁修業の道を歩むことができたとミゼアスは満足する。
あとはアデルジェスを待つだけだ。ミゼアスが宿に戻ってきた時点で、もうすぐ日が暮れ始めようかという時間だった。もう間もなくアデルジェスは戻ってくるだろう。
一階の出入り口に近い席で待っていると、扉が開いた。そこに待ち焦がれていたアデルジェスの姿を認め、ミゼアスは立ち上がって駆け寄る。
「お帰り、ジェス」
声を弾ませ、ミゼアスはアデルジェスに飛びつく。
「ただいま。ああ……今触ったら、ミゼアスも汚れちゃうよ」
ミゼアスを受け止めながら、困ったようにアデルジェスが答える。
「汚れたっていいよ。ジェス、どこも怪我していない? 大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。土砂崩れに巻き込まれた人も、軽い怪我だけだったし、みんな無事だったよ」
「よかった……」
「ところで……帰ってくる途中、怖い話を聞いたんだ。町中で見せしめのため、罪人の引き回しがあったって。そんなことするくらいだから、きっとすごいことをやったんだろうけど、もし事件にミゼアスが巻き込まれていたら……と嫌な予感がして心配だったんだ」
「へえ、そんなことがあったんだ。僕は大丈夫だよ。今日はね、ちょっとだけ料理を教わってきたんだ。それでね……」
ミゼアスの知らない間に、物騒な事件があったらしい。巻き込まれなくて幸いだった。
それよりも、早くアデルジェスに見せたいものがあるのだ。アデルジェスを連れて部屋に戻ると、ミゼアスは肉団子の包みをアデルジェスに差し出した。
「これ、僕が作ったの! ジェスに食べてもらおうと思って、持って帰ってきたんだ」
声に誇らしさが滲む。とうとう、自分の料理をアデルジェスに食べてもらうことができるのだ。『およめさん』として大きな一歩を踏み出したと、ミゼアスは喜びを噛み締める。
アデルジェスは驚いたようにミゼアスと肉団子を見比べていた。
「ミゼアスが? 食べていいの?」
「もちろん。そのために持ってきたんだもの」
アデルジェスは肉団子をひとつつまみ、口の中に入れてゆっくりと味わう。
「……美味しい。美味しいよ、ミゼアス。冷めているのに柔らかくて、こんなに美味しい肉団子を食べたのは初めてだ。ミゼアスって、本当に何でもできるんだね」
感嘆の声を漏らすアデルジェス。
「まだあるから、食べてね」
ミゼアスの胸は達成感に満たされていく。フィオンに料理を教わって、正解だった。旅立つ前に何か礼をしておこうと、心に決める。
ただ途中からフィオンの態度がどうもよそよそしくなり、敬語を使うようになっていたのは何故だろうか。よくわからない。
それでも今日は料理を少し教わることもできた。順調に花嫁修業の道を歩むことができたとミゼアスは満足する。
あとはアデルジェスを待つだけだ。ミゼアスが宿に戻ってきた時点で、もうすぐ日が暮れ始めようかという時間だった。もう間もなくアデルジェスは戻ってくるだろう。
一階の出入り口に近い席で待っていると、扉が開いた。そこに待ち焦がれていたアデルジェスの姿を認め、ミゼアスは立ち上がって駆け寄る。
「お帰り、ジェス」
声を弾ませ、ミゼアスはアデルジェスに飛びつく。
「ただいま。ああ……今触ったら、ミゼアスも汚れちゃうよ」
ミゼアスを受け止めながら、困ったようにアデルジェスが答える。
「汚れたっていいよ。ジェス、どこも怪我していない? 大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。土砂崩れに巻き込まれた人も、軽い怪我だけだったし、みんな無事だったよ」
「よかった……」
「ところで……帰ってくる途中、怖い話を聞いたんだ。町中で見せしめのため、罪人の引き回しがあったって。そんなことするくらいだから、きっとすごいことをやったんだろうけど、もし事件にミゼアスが巻き込まれていたら……と嫌な予感がして心配だったんだ」
「へえ、そんなことがあったんだ。僕は大丈夫だよ。今日はね、ちょっとだけ料理を教わってきたんだ。それでね……」
ミゼアスの知らない間に、物騒な事件があったらしい。巻き込まれなくて幸いだった。
それよりも、早くアデルジェスに見せたいものがあるのだ。アデルジェスを連れて部屋に戻ると、ミゼアスは肉団子の包みをアデルジェスに差し出した。
「これ、僕が作ったの! ジェスに食べてもらおうと思って、持って帰ってきたんだ」
声に誇らしさが滲む。とうとう、自分の料理をアデルジェスに食べてもらうことができるのだ。『およめさん』として大きな一歩を踏み出したと、ミゼアスは喜びを噛み締める。
アデルジェスは驚いたようにミゼアスと肉団子を見比べていた。
「ミゼアスが? 食べていいの?」
「もちろん。そのために持ってきたんだもの」
アデルジェスは肉団子をひとつつまみ、口の中に入れてゆっくりと味わう。
「……美味しい。美味しいよ、ミゼアス。冷めているのに柔らかくて、こんなに美味しい肉団子を食べたのは初めてだ。ミゼアスって、本当に何でもできるんだね」
感嘆の声を漏らすアデルジェス。
「まだあるから、食べてね」
ミゼアスの胸は達成感に満たされていく。フィオンに料理を教わって、正解だった。旅立つ前に何か礼をしておこうと、心に決める。
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