僕はおよめさん!

四葉 翠花

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第二章 南へ

42.学ぶ機会

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「きみ、食料品の買い出しって言ったよね。賄いもやっているの?」

 ふと気になって尋ねてみる。食料品の買い出しということは、男娼だけではなく、厨房の仕事もしているのだろうか。

「え? 普通に自炊しているけど。俺、弟と二人暮らしなんだ」

「どこかの娼館にいるわけじゃないの?」

「いちおう属しているところはあるけれど、ずっとそこにいるわけじゃないよ。場所代払って部屋借りているようなもの。仕事するときだけ行って、普段は自宅に住んでいるよ」

「へえ……そんな風になっているんだ」

 不夜島では、花たちは娼館に住み込みだった。場所によって、いろいろな形式があるものだとミゼアスは感心して頷く。

「うん、中には借金で縛られている人もいるけど、俺は返し終わったし自由」

「借金、返し終わったの?」

「もともとそんなに多くなかったしね。前借りっていったほうが正しいかも。弟が病気になったとき、薬代のために……っていうのが始まりだったんだ。今は金を貯めるために続けてる」

「そっか」

 不夜島の花たちは、基本的に莫大な借金を抱えている。十五歳程度で返せるのは、ごく一部の者だけだ。
 しかしフィオンは薬代だというので、そこまでの金額ではなかったのだろう。
 自分の意思で続けているようだし、さほど悲惨な境遇ではないようだ。
 続けざるを得ない事情はあるのだろうが、それでも暗い目をしていないことに、ミゼアスは何となく胸を撫で下ろす。

「ところで、ミゼアスさんはこれからどうするの? 俺は食料品買ったら帰って、昼飯作るけど」

「どうしようかと考えていたところだよ。あぁ……きみ、自炊しているって言っていたよね。料理、できるの?」

「まあ、それなりに。そんなにすごいものは作れないけど、普通に食べられるものなら作れるよ」

 あっさりと答えるフィオンに、ミゼアスはひとつの考えが浮かび上がってくる。

「ふぅん……じゃあさ、僕に料理を教えてもらえないかな? 昼食分の材料費は僕が持つから」

「え? あ、うん……別にいいけど……そんなたいしたものは作れないよ。ごく普通の家庭料理だけど、いいの?」

 フィオンはわずかに戸惑いを見せながらも、拒絶はしなかった。
 家庭料理、素晴らしいではないか。やはり『およめさん』ならば、身につけたいのは家庭料理だろう。
 思いがけず、料理を学ぶ機会が巡ってきたようだ。ミゼアスは鷹揚に頷く。

「もちろん構わない。というより、家庭料理がいい」
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