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第二章 南へ
33.抗えない
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「……どうかしたの?」
浴室からミゼアスが出てきた。髪は乾いたままで、濡れた身体に布を巻きつけただけの姿だった。
「そ、そこで……いや、何でもない……」
正直に言いかけたが、アデルジェスははっとして口をつぐむ。
「……何でもないってこと、ないよね。どうしたの? 言ってみなよ」
当然、不審に思ったようでミゼアスが問いかけてくる。
「……そこで、さっきの集団の一人に誘われて……その……口で抜いてやるって……」
「はあ?」
ミゼアスの眉が不快そうに寄せられる。
「もちろん、断って逃げてきたよ」
きっぱりとアデルジェスは宣言する。せっかくミゼアスの機嫌が直ったばかりなのに、また損ねてしまうのは避けたかった。
しかしミゼアスは眉を寄せたまま黙り込んでしまう。出口など存在しない行き止まりに追い詰められたような気分になり、アデルジェスは困り果てる。
ややあって、無言のままミゼアスはアデルジェスの目前まで歩いてきた。アデルジェスがどうすればよいのかと戸惑っていると、ミゼアスはアデルジェスのズボンに手をかけて下着もおろしてしまった。
ミゼアスはアデルジェスの前に屈みこみ、今の出来事ですっかり力を失ってしまったアデルジェスのものをうやうやしく掲げ持って口づける。
「え?」
アデルジェスは茫然と立ち尽くすが、舌が這う刺激と、何よりミゼアスの視線に熱が急激に煽られる。
ミゼアスの瞳にはアデルジェスに対する独占欲、嫉妬といった昏い炎が揺らめいてたかと思えば、情欲が燃え上がり、溢れんばかりの愛情を宿す。めまぐるしく色を変え、アデルジェスを焼き尽くそうとするような激しい炎だった。
「ふふ……すぐ元気になったね……嬉しいなぁ」
薄く笑い、ミゼアスはアデルジェスのものを口に含む。温かく、柔らかい口内の刺激に快楽が走った。同時に、炎を宿したまま恍惚とした表情でアデルジェスのものを咥えるミゼアスの姿に、身体の奥底から熱がわきあがってくる。
「ミ……ミゼアス……」
掠れた、苦しげな声でアデルジェスはミゼアスの名を呼ぶ。
まだミゼアスは優しく、ゆっくりとした刺激しか与えてはこない。しかし情熱的な視線と、幸福でたまらないといった様子で奉仕する姿に、アデルジェスは限界寸前まで追い詰められていた。
「ごめっ……もうっ……!」
とうとう耐え切れず、アデルジェスは精を放った。しかしミゼアスは離れず、口内に放たれたものを飲み下すと、最後の一滴まで搾り取るように吸い上げる。
「うっ……」
身体の芯が溶け出していくような快楽に、アデルジェスは立っているのが精一杯だった。
ややあってミゼアスが名残惜しげに口を離し、柔らかくなったアデルジェスのものに軽く口づける。
「ごちそうさま。美味しかったよ。ねえ……今度は、僕の中にちょうだい?」
上目遣いに囁くミゼアスの瞳は情欲に潤み、なまめかしく淫靡な笑みを口元に漂わせている。アデルジェスはごくりと喉を鳴らした。
いったい何を思ってこの行為に出たのかはわからないが、もうどうでもよい。アデルジェスがこの色香に抗えるはずなどないのだ。
浴室からミゼアスが出てきた。髪は乾いたままで、濡れた身体に布を巻きつけただけの姿だった。
「そ、そこで……いや、何でもない……」
正直に言いかけたが、アデルジェスははっとして口をつぐむ。
「……何でもないってこと、ないよね。どうしたの? 言ってみなよ」
当然、不審に思ったようでミゼアスが問いかけてくる。
「……そこで、さっきの集団の一人に誘われて……その……口で抜いてやるって……」
「はあ?」
ミゼアスの眉が不快そうに寄せられる。
「もちろん、断って逃げてきたよ」
きっぱりとアデルジェスは宣言する。せっかくミゼアスの機嫌が直ったばかりなのに、また損ねてしまうのは避けたかった。
しかしミゼアスは眉を寄せたまま黙り込んでしまう。出口など存在しない行き止まりに追い詰められたような気分になり、アデルジェスは困り果てる。
ややあって、無言のままミゼアスはアデルジェスの目前まで歩いてきた。アデルジェスがどうすればよいのかと戸惑っていると、ミゼアスはアデルジェスのズボンに手をかけて下着もおろしてしまった。
ミゼアスはアデルジェスの前に屈みこみ、今の出来事ですっかり力を失ってしまったアデルジェスのものをうやうやしく掲げ持って口づける。
「え?」
アデルジェスは茫然と立ち尽くすが、舌が這う刺激と、何よりミゼアスの視線に熱が急激に煽られる。
ミゼアスの瞳にはアデルジェスに対する独占欲、嫉妬といった昏い炎が揺らめいてたかと思えば、情欲が燃え上がり、溢れんばかりの愛情を宿す。めまぐるしく色を変え、アデルジェスを焼き尽くそうとするような激しい炎だった。
「ふふ……すぐ元気になったね……嬉しいなぁ」
薄く笑い、ミゼアスはアデルジェスのものを口に含む。温かく、柔らかい口内の刺激に快楽が走った。同時に、炎を宿したまま恍惚とした表情でアデルジェスのものを咥えるミゼアスの姿に、身体の奥底から熱がわきあがってくる。
「ミ……ミゼアス……」
掠れた、苦しげな声でアデルジェスはミゼアスの名を呼ぶ。
まだミゼアスは優しく、ゆっくりとした刺激しか与えてはこない。しかし情熱的な視線と、幸福でたまらないといった様子で奉仕する姿に、アデルジェスは限界寸前まで追い詰められていた。
「ごめっ……もうっ……!」
とうとう耐え切れず、アデルジェスは精を放った。しかしミゼアスは離れず、口内に放たれたものを飲み下すと、最後の一滴まで搾り取るように吸い上げる。
「うっ……」
身体の芯が溶け出していくような快楽に、アデルジェスは立っているのが精一杯だった。
ややあってミゼアスが名残惜しげに口を離し、柔らかくなったアデルジェスのものに軽く口づける。
「ごちそうさま。美味しかったよ。ねえ……今度は、僕の中にちょうだい?」
上目遣いに囁くミゼアスの瞳は情欲に潤み、なまめかしく淫靡な笑みを口元に漂わせている。アデルジェスはごくりと喉を鳴らした。
いったい何を思ってこの行為に出たのかはわからないが、もうどうでもよい。アデルジェスがこの色香に抗えるはずなどないのだ。
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